退職者から残業代請求された企業から相談を受け、約480万円の請求を3分の1以下に減額できた成功事例
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退職者から残業代請求された企業から相談を受け、約480万円の請求を3分の1以下に減額できた成功事例

退職者から残業代請求された企業から相談を受け、約480万円の請求を3分の1以下に減額できた成功事例

この成功事例を紹介する弁護士

  • 弁護士  片山 琢也
  • 咲くやこの花法律事務所  弁護士  片山 琢也

    出身地:大阪府。出身大学:京都大学法学部。主な取扱い分野は、「労働関連(組合との団体交渉、就業規則や契約書作成・チェック、残業代請求・解雇トラブルへの対応、従業員のメンタルヘルスから職場復帰へのアドバイス、従業員間のトラブルへの対応等)、債権回収、システム開発トラブル、建築業の顧客トラブル対応、インターネット上の悪質記事の削除請求など」です。

1,業種

 

「埼玉県の会社経営者のお客様」の事例です。

 

2,事件の概要

 

本件は、退職した元従業員から会社に対し、残業代の請求がされた事案です。

この退職者は、確かに1日8時間をこえて勤務していましたが、会社は管理監督者の地位にあると認識していたため、残業代を支払っていませんでした。

在職中、会社はこの元従業員に対して、管理監督者の立場にふさわしい業務に取り組んでほしいと伝えていました。

しかし、本人は会社から求められる管理監督者としての業務に取り組まず、平社員が行うような業務ばかりしていました。その一方、元従業員には、管理監督者の立場であることから、他の従業員と比べてかなり高額の給与が支給されていました。

元従業員は、この状態を都合よく解釈し「平社員としての業務しかしておらず、管理監督者ではない」として、退職後に残業代を支払うよう会社に請求をしてきました。

この事案について咲くやこの花法律事務所にご相談いただき、交渉をご依頼いただきました。

 

3,問題の解決結果

 

遠方の会社であったこともあり、電話での打ち合わせのみで一度もお会いすることはできませんでしたが、弁護士においてできる限り主張を行った結果、当初の請求額を3分の1以下に減額して解決することができました。

依頼者からも、事件解決後のアンケートで以下のようにご回答いただき喜んでいただけました。

 

▶参考情報:事件解決後のアンケートより

 

Q1:「咲くやこの花法律事務所」に問い合わせをしていただいた時の対応について、「第一印象」を教えて下さい。

A1:他に2~3つの法律事務所に落としどころを聞いたところ、負け試合といわれたところ、六法全書を開きながら負け試合と言われたところなどばかりだったが、遠方にもかかわらず電話で話をしっかり聞いていただいたところがよかった。

 

Q2:「咲くやこの花法律事務所」に依頼して「良かった点」を教えて下さい。

A2:負け試合なりにも、しっかりとこちらの主張すべきところを主張し、対策が打て請求額の減額ができた点。

どうしても私の主張したいこと、いろいろと自分を有利にする材料を40点も50点も考え、弁護士先生に伝えましたが、最終的には、先方様との交渉で、有利になる点をしっかりピックアップしていただけた点がよかった。

 

4,問題解決における争点(弁護士が取り組んだ課題)

 

本件では、以下の3つの点を争点として取り上げ、退職者の主張を争いました。

 

(1)管理監督者にあたるかどうか

 

ご存じの通り、労働基準法が規定する「管理監督者」にあたれば残業代は発生しません。

そして、この管理監督者に当たるかどうかについては、経営に関わるような重要な職務を担っていたか、時間管理を受けていたか、職務に見合う相応の給与をもらっていたか等の諸事情を総合して判断されます。

ただ、会社側で管理監督者として扱っていたとしても、裁判所では管理監督者とはなかなか認めてもらえず、会社側が敗訴しているケースが大半になっていることが現実です。

本件でも、管理監督者に当たらないとする根拠になる、会社にとって不利な事情が多数あり、会社にとっては難しい事案でした。

 

1,難しい事案でも会社に有利な事情を拾い上げる努力が必要

 

しかし、弁護士が依頼者から相談を受けて話を聞いたところ、会社にとって有利な事情も少なくありませんでした。

例えば、本件では、会社から元従業員に対して、管理監督者として経営事項に深くかかわることを求め、重要業務に取り組むように指示をしていました。また、管理監督者として時に社長よりも高い給与が支給されていました。

これらは会社にとって有利な事情といえます。そこで、会社にとって有利なこれら事情を裏付ける、過去の指示書やメール履歴等の証拠を集め、粘り強く交渉をしていくことしました。

 

(2)固定残業代制度の有効性について

 

給与の一部を固定残業代として支給している会社も多いと思います。

本件でも、この固定残業代の制度をとっていました。固定残業代が支払われている場合は、残業代の一部がすでに支払われていることになり、仮に残業代を支払うこととなっても、算定された残業代から固定残業代として支払った分を差し引くことができます。

ただ、固定残業代についても、裁判等で認められるためにはいくつかの要件をクリアしていなければならず、認められるには一定のハードルがあると言えます。

本件では、固定残業代制度の有効性について、会社にとって不利な事情が多くありましたが、就業規則で固定残業代について記載されている点を主張し、また、在職時に会社から元従業員に対して固定残業代の説明をしていたこと等も主張して、出来る限りの交渉を行うこととしました。

 

「弁護士 西川 暢春からのワンポイント解説」

固定残業代制度と就業規則についての注意点を以下で解説しています。現在固定残業代制度を導入している会社にとって重要な情報を記載していますので参照してください。

 

▶参考情報:固定残業代(みなし残業代)とは?導入メリットや計算方法・注意点を解説

 

(3)残業時間について

 

本件では、退職者から残業代を請求されている残業時間が本当に正しい時間かどうか、という点でも争いがありました。

退職者はタイムカードの記録に基づいて請求をしてきていましたが、タイムカードには業務終了後に速やかに打刻がされていなかったため、記録されている時間と実際の残業時間が異なる状態でした。

もし裁判になれば、判例上、タイムカードの記録が重視され、実態がタイムカードの記録と異なるという会社側の主張はなかなか認められ難い傾向にあります。

しかし、タイムカードの記録と実際の残業時間の違いについても、他の従業員の証言を集めるなどして、できる限りの交渉を行いました。

 

「弁護士 西川 暢春からのワンポイント解説」

裁判でタイムカードの信用性を争った事案に関する判例やタイムカードの不正打刻について以下で解説しています。あわせてご参照ください。

 

▶参考情報:【判例ニュース】 タイムカードの信用性を否定し、従業員からの残業代の請求に対する企業側の反論を認めた裁判例

▶参考情報:タイムカード不正打刻や手書きでの改ざん!従業員に懲戒処分すべき?

 

5,担当弁護士の見解

 

以下では、担当弁護士の見解について詳しく解説していきます。

 

(1)裁判例はあくまで参考であって、絶対的なものではない

 

残業代請求に関しては、数多くの裁判例があり、インターネット上でもいろいろと解説がされています。

それらは、確かに、交渉の方針を検討する上で重要な資料になります。類似する事案であれば、裁判をした際は、その事例と近い結論になることも予想されます。

しかし、過去の裁判例の事案と現在の事案が全く同じであることはありません。そのため、結論も裁判例とは変わってくる可能性は常にあるといえます。

 

1,裁判になったときの見通しが厳しくてもあきらめずに交渉する

 

残業代請求の事案は、個別性の高い事案でもあり、裁判例を過度に重視すべきではありません。

本件では、3つの争点(管理監督者性、固定残業代、残業時間)がいずれも、証拠や過去の裁判例に照らすと会社側には厳しい事案でした。

実際、依頼者も近隣で相談した複数の法律事務所で、厳しい見解を弁護士から告げられていました。そのような中、企業側の労働問題を専門とする弊所に何とかならないかと、ご相談いただきました。

そこで、弁護士と依頼者で改めて状況を確認していったところ、会社側の主張は決して不合理なものではなく、あきらめずに主張すれば交渉の余地があると思われました。

そこで、依頼者とも相談して、丁寧に会社側の主張を行い、相手方の主張を大きく争っていくこととしました。

 

(2)証拠の取捨選択

 

1,難しい事案でもきっちりと証拠を探すことが必要

 

認められにくい主張でも、当然ですが証拠があればそれだけ認められやすくなり、交渉でも相手から譲歩を引き出しやすくなります。

本件では、「管理監督者にあたるかどうか」、「固定残業代が有効といえるかどうか」、「タイムカードの記録が正しくないといえるかどうか」というそれぞれの問題について、どのような証拠があるかについて依頼者と打ち合わせを行い、弁護士が検討しました。

 

2,主張内容をしぼり、不必要な主張はしない

 

本件では、依頼者としても主張したいことがたくさんあり、入社時から退職時までの約10年間にわたる元従業員の業務内容の変遷や、給与体系の変遷など、たくさんの事情について説明がありました。

しかし、主張する事実関係やそれを示すための証拠は多ければよいというものではなく、意味のあるものにしぼる必要があります。

関連性のうすい主張を漫然と行っても、かえって重要な証拠が埋もれてしまって、主張を効果的にできません。また、関連性のうすい主張を大量に行うと、諸刃の刃のように相手に反論のきっかけを与える結果になることもあるため、注意が必要です。

 

3,証拠の適切な取捨選択こそ弁護士の手腕

 

有利不利などを総合的に判断して、証拠を適切に取捨選択することが重要です。

それこそが専門家である弁護士の手腕が問われる点でもあります。

本件でも、依頼者から過去のメール履歴や、打ち合わせ、面談を行った際の資料等をまとめて送っていただきました。それらたくさんの資料を弁護士が確認し、その中から効果的な資料の取捨選択を行いました。

 

(3)正確な主張の重要性

 

1,誤った主張をしてしまうと相手に主導権を握られる

 

この事案に限ったことではありませんが、主張するに当たっては、正確な主張をすることが重要です。

主張した後に相手から指摘されて間違いが判明し、主張を訂正するといったことがあると、相手方に交渉の主導権を握られることになってしまいかねません。

 

2,相手が誤った主張をしたときはそれを指摘し譲歩を引き出す

 

ただ、前述の点については逆のことも言え、事案として不利な状況であっても、相手側が誤った(時には虚偽といえるような)主張をしてきた場合、それを指摘することをきっかけに有利な雰囲気で交渉ができることがあります。

そして、結果として相手から大きな譲歩を引き出すことができたりします。

ゆえに、自分の主張が間違いのない主張となるように注意しつつ、相手の主張の間違いを効果的に指摘していくことが、交渉を有利に進めるためにとても大切なことだといえます。

 

3,本件でも相手の誤った主張が譲歩を引き出すきっかけになった

 

本件でも、感情的な対立もあったからか、相手から明らかに誤った主張がされました。

この点を弁護士から指摘した結果、相手の主張の勢いがなくなり、結果として有利な解決ができました。

一方、当方の主張については、間違った主張をして足元をすくわれないように、細かな点まで依頼者に確認をお願いし、自ら不利な状況を作らないように気を付けて交渉をしました。

 

6,解決結果におけるまとめ

 

今回のケースは、法律的には会社側の主張が認められにくい事案でした。

しかし、幸いにも裁判になる前にご相談いただきましたので、弁護士と依頼者で協力して、出来る限り証拠を集めて、丁寧に主張をして粘り強く交渉を行いました。また、正確な主張を心がけたことで、相手の主張をきっかけにして心理的に有利な交渉ができる状況に持ち込めました。

以上の結果、請求額を大きく減額した3分の1以下の金額で解決することができました。

なかなか交渉が難しい事案でも、細かな事実関係で結果が変わってくるのが労働問題です。あきらめることなく、会社側の主張を丁寧に行うことが大切です。

残業代の問題でお困りの会社経営者の方、管理者の方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

 

なお、未払い残業代請求を受けた場合の企業側の反論方法については以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

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    著者:弁護士 西川 暢春
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    出版社:株式会社日本法令
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    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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