今回の解決事例で書かれている内容(目次)
本件は、インターネット上で商品を販売する会社が、仕入先から急な商品仕入価格の値上げを通知された問題です。
この仕入先とは、5年以上にわたって継続的に取引を行っており、その間は同じ条件で取引を行っていました。しかし、突然、仕入価格の値上げが通知されました。もともと、仕入価格は値上げも含めて仕入先が決定すると契約書に記載がされていました。
しかし、通知がされた時点で、この取引先との取引による利益が、会社の利益の大半を占めており、仕入価格の増額は会社の存続にかかわる問題でした。
このような事態に対して、なんとかできないかとご相談いただいた事案です。
弁護士が交渉した結果、仕入先との取引は6か月で終了することになりましたが、6か月間は値上げ前の条件で取引を継続し、かつ取引終了時に1000万円の補償金を支払ってもらうことで合意しました。
会社の損害を最小限にする形で解決することができました。
仕入先と依頼者は、基本契約書を取り交わして継続的に商品の売買をしていました。
そして、基本契約書には価格変動がありうること、仕入価格は仕入先が決定するとの規定がされていました。そのため、基本契約書上は、仕入先からの値上げ通知を受けいれなければならないように思われます。仕入先も正当な通知をしているとの認識であったため、依頼者が値上げについていくら話合いを希望しても聞く耳をもってくれない状態でした。
しかし、仮に契約書に規定があっても、一定期間、継続的に取引を続けている関係にあった場合は、過去の取引状況等、種々の事情によっては、突然の値上げを不当として拒否することができます。
そして、一定期間は今まで通りの取引を求めることができる場合があります。そのため、まずは弁護士から今回の取引についての経緯を細かく聞き取りし、今まで通りの取引を求めることができるかを検討しました。
その結果、一方的な突然の値上げについては反論の余地があると判断して仕入先との交渉を行いました。
今回のケースのような小売事業をされている場合は特にそうですが、それ以外の場合でも取引先と基本契約書を交わして継続的に取引を行っていることはよくあると思います。
このような1度きりの取引ではなく、繰返し継続して取引を行っている場合、長年続いている取引関係が法的に保護される場合があります。
例えば、東京地裁平成16年4月15日の判決で裁判所は、継続的取引を解約する場合は一定の制限があるとし、以下のように判断しています。
「契約関係にある相手方当事者の…利益を考慮することなく一方的な解約をすることは許されるべきではない。…解約するには合理的理由が存在すること、相手方の取引上の利益に配慮した相当期間の猶予が要求される」(…部分は略)
この判決は契約解約の場面ですが、価格の値上げといった取引上の利益を大きく左右する重大な変更にも同様の制限がされるといえます。
そのため、依頼者から仕入れ先との基本契約書やこれまでの取引額や利益額等がわかる資料の提供を受けて、弁護士が内容を確認しました。また、資料の確認以外にも、取引開始の経緯や、開始から現在までの仕入先とのやりとり、値上げが通知された際の仕入先とのやり取り等の聴き取りを行いました。
基本契約書には、確かに、仕入価格について仕入先が決定できるという趣旨の規定がありました。
しかし一方で、取引開始の際、価格は一定のルールで決定されると説明され、仕入先がまったく自由に価格を決めているわけではない事がわかりました。
そして、取引開始以来そのルールが一貫して守られていました。仕入先との取引は5年以上続いていました。
今回の突然の値上げは、仕入先側で上記の価格設定ルールの運用に誤りがあることが発覚したことが原因でした。
この誤りを是正したため、価格が値上げされることとなりました。仕入先は取引開始以来、5年以上にわたってルール運用の誤りを見過ごしており、これに気付いて突然の値上げを通知してきたという事です。仕入先のミスが原因であって、依頼者には何の落ち度もありませんでした。
依頼者においては、仕入先との取引による利益が全利益の7割~8割にも上っていました。
仕入先との取引で年間2000万円以上の利益がありましたが、仕入先による値上げによって、この利益がほとんどなくなるかもしれない可能性がありました。依頼者にとっては死活問題でした。
以上を総合的に考慮すれば、突然の値上げを拒否し、一定期間は今まで通りの内容での取引を求めることは法的にも十分に可能であると判断しました。
仕入先は、値上げについては契約書規定に基づいて通知しているとして、依頼者が訴えても交渉の余地なしとの姿勢でした。
そのため、まずは仕入先の主張が不当であることを説明して、仕入先に交渉の義務があることを理解させる必要がありました。そこで、弁護士から上記の事情を踏まえて、今回の値上げが不当であり、依頼者にとっては死活問題であることを関連する裁判例も示し、書面で丁寧に説明しました。
その結果、ようやく仕入先も話し合いに応じてくれるようになりました。
交渉の結果、仕入先との取引は半年間で終了することとしました。そして、その半年間は一部条件を変更しつつも価格については今まで通りの内容で取引を継続することを認めてもらいました。そして、契約終了後に半年分の金銭補償として1000万円を支払ってもらうことで合意をしました。
依頼者には何ら落ち度がなかったため、当初は契約終了となることは理不尽であり納得がいかないところがありました。しかし、理不尽であっても関係が悪化しているのであれば継続的に取引を続けていくことは難しく、また1年後には値上げされることなり結局は取引を続けるメリットがなくなる事等を鑑みて、契約終了についても同意することとしました。
最終的には、およそ1年分の利益を確保することができ、依頼者の受ける損害を最小限にする形で解決することができました。
今回のケースは、仕入先からの一方的な値上げの通知に対して、弁護士が交渉して、値上げ時期の延期と補償金の獲得に成功した事例です。
今回の値上げに対して弁護士が行った交渉のロジックは、仕入商品の代金の画面だけでなく、運送料金の値上げなど、他の料金関係にもあてはまります。
これまで継続してきた契約について突然の値上げでお困りの場合は、ぜひ「咲くやこの花法律事務所」にご相談ください。
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