今回の解決事例で書かれている内容(目次)
「インテリア用品販売業」の事例です。
本件は相談者の会社を退職した役員が会社の写真データを持ち出して無断で使用していた事例です。
相談者の元役員が、退職後に、自身の経営する会社のウェブページに相談者の店内の写真を掲載したり、相談者と関係がないのにグループ会社であると掲載したりしているという事案でした。
既に相談者の会社を辞めた人が、勝手に写真を使っていることや、関係ない会社がグループ会社と名乗っていることは許せないので、早急にその写真や記載を削除させたいとご相談いただきました。
弁護士から、削除を要求する法的根拠を明確にした内容証明郵便を元役員の会社に送付して、元役員の会社のウェブページから問題の写真や文章の掲載を直ちに削除するように通知しました。
その結果、相手方から、通知書がとどいた翌日に、削除した旨の連絡があり、弁護士が確認したところ、確かに削除を請求した写真と記載事項が削除されていることを確認できました。
依頼を受けてから5日間で問題となった写真と文章を、該当ウェブページから削除することができました。また、今後は載せないことを相手方に誓約させることができました。
本件のポイントは、以下の5点でした。
店内の写真は、相談者が自社のウェブページに使用するために撮影させたものでした。そのため、相談者が業務上作成したものであり、相談者に著作権があると考えられました。
相談者に著作権があるならば、相手方がウェブページに掲載していることは、相談者の著作権を侵害する行為となります。そこで、写真については、著作権に基づいて、相手方に削除を求めることにしました。
また、相談者は元役員の退任後に写真が使用されていることに気づいたため、問題の写真がいつから掲載されているかはわかりませんでした。
元役員の在任中から表示していたのであれば、元役員からウェブページでの使用を会社から許諾されていたと反論される可能性が考えられました。
しかし、役員が在任中に自分の経営する会社と取引することは会社法上、利益相反行為にあたり、取締役会での報告が必要です。そして、相談者の取締役会に写真の使用のことが報告されたことはありませんでした。
そのため、このような反論があったとしても問題はないと考えました。
相談者は創業から100年以上も続いている会社であり、知名度もありました。そのため、相談者のグループ会社であるという表示は、消費者に相談者と同じように信用できる会社であるとの印象を与えることになると考えられました。
不正競争防止法において、商品の品質等について誤認させるような表示をする行為が禁止されています(「品質等誤認惹起行為」と呼ばれます)。
弁護士としては、元役員の会社が、相談者の会社のグループ会社であるかのような記載をすることは、この品質等誤認惹起行為にあたるとして、削除を求めることができると考えました。
相手方に早期に通知することで、早期に対応することが期待できます。また、本件では、相談者と元役員の関係から、きちんと法的根拠のある請求であることを相手に理解させなければ、削除がされない可能性が高いと考えられました。
そこで、弁護士が、削除を求める対象と削除を請求する根拠を記載した書面を作成し、相手方に通知することにしました。また、相手方のウェブページにFAX番号が記載されていたため、内容証明郵便の送付と並行して、FAXを送ることで少しでも早く相手方に通知が届くことを狙いました。
しかし、残念ながら、掲載されているFAX番号に送ったFAXが、受信されなかったため、FAXによる早期通知の狙いは功を奏しませんでした。結局、並行して送っていた、内容証明郵便が届いたことにより相手に通知されました。
相手方に通知をおくる時点では、相談者が法的に請求できる損害は、写真の無断使用によるライセンス料相当額にとどまる見込みでした。
また、その写真は、ウェブページ上で相談者の店内を紹介するために作成した写真であり、写真自体を販売する目的のものではありませんでした。
そのため、仮に損害賠償請求を行ったとしても請求できる額は大きくないと予想されました。また、相手方によるウェブ上の記載による相談者の業務への影響はまだ発生しておらず、相談者としても損害賠償請求は重要視していませんでした。
そこで、相手が削除に応じなければ損害賠償請求をする、との通知にとどめ、具体的な請求はしませんでした。そして、削除されれば、賠償請求までせずに終わらせることとしました。
相手方の記載については、いつから掲載されているかはわかりませんでした。しかし、当社製品の割引が記載されている、とか、グループ会社であるという表示は、元役員が在任中に相談者において、一定の権限をもっていたことから記載されたと考えられます。
既に元役員が退任していることから、相手が削除後に、再度、方法を変えて類似の記載をする可能性は低いと考えられました。
そこで、本件では、相談者の希望もあり、早期の解決を優先し、再発防止を誓約する書面の提出までは要求せず、口頭で再発させないことを誓約させることにとどめました。
弁護士から適切な法的根拠に基づいて削除請求することで、狙いどおり、依頼から5日間という短期間で問題となる記載をウェブページから削除させることができました。
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