今回の解決事例で書かれている内容(目次)
「介護事業」の事例です。
本件は、会社の取締役から、会社の清算についてご相談いただいた事例です。
その内容は、会社の社長(代表取締役)が急死したため、事業の継続を断念して、会社を清算したいというものでした。
詳細は以下の通りです。
相談者の会社は役員2名、従業員がパートも含めて4名という小規模の会社でした。そして、社長が取引先との契約内容や従業員の給与計算などを管理しており、そのほかの人は会社のことをあまり把握していませんでした。
その社長が体調を崩して入院後、症状が悪化して退院することなく亡くなられました。
社長は亡くなられる前に、売上金の請求手続の方法についてはなんとか、相談に来られた取締役に引継ぎをしておられました。しかし、体調の悪化が急であっため、それ以外の引継ぎはまったくできていない状態で亡くなってしまいました。
相談者として来られた取締役は、引継ぎが完全には行われず業務の手順についてわからない部分があることなどから、会社の経営を自分一人で続けていくことはできないと考えていました。
会社の営業は停止していましたが、家主から家賃の支払督促や従業員から給与の支払督促を受け、精神的にも追い詰められた状況になっていました。
そこで、自分が会社を離れるためには、今後、会社をどのようにすればいいのかをご相談に来られました。
残った取締役を代表取締役として、会社の破産手続きを行うことでスムーズに会社を清算することができました。
また、会社の社長が亡くなっていたため、会社の取引先や、従業員の給与についてわからない点が多々ありましたが、弁護士の調査により、なんとか破産申し立てを行い、会社の清算にこぎつけることができました。
弁護士が初回の相談時に、相談者から事情をきいたところ、以下のような事情でした。
上記のような事情から、弁護士としては、破産により会社を清算することがベストであると判断しました。
なお、銀行融資については、亡くなった社長が個人で連帯保証をしていましたが、相談者は連帯保証していなかったため、相談者個人の破産は必要ありませんでした。
ただし、会社を破産手続きで清算するにあたっては以下の問題がありました。
代表取締役が死亡しているため、そのままでは破産申し立てができませんでした。
社長が亡くなる以前に、会社は第三者に対して裁判を起こしており、それが、社長が亡くなった後も継続中でした。
裁判の期日がせまっており、今後、この訴訟をどうするかも問題となりました。
取引先との契約関係や、従業員の給与の最終決定は亡くなった代表取締役がおこなっていたため、残った取締役にはよくわかっていませんでした。
そのため、破産の申立の前に、内容の調査が必要でした。
以下では、担当弁護士の方針について詳しく解説していきます。
会社の破産申立をするにあたって、代表取締役が欠けたままでは会社自身による破産申立ができません。
この場合、代表取締役以外の取締役が「準自己破産申立」を行うことは可能です。
しかし、準自己破産申立の場合、特別代理人の選任を裁判所に申し立てることが必要になるなど、自己破産申立に比べ手続と時間が余分に必要になります。
そこで、少しでも早く破産手続きを進めて会社を清算する方法がないかを検討しました。
法律上は、代表取締役が死亡した場合に、残った取締役が当然に代表になることにはなっていません。しかし、相談者の会社は、取締役会が設置されていない会社であり取締役の互選で代表取締役を定めることになっていました。
また、会社の取締役の定数は1名以上でした。そこで1名のみ残っていた取締役に、自らを代表取締役として選任してもらい、代表取締役変更の登記をした後に、自己破産申立を行うという方法をとりました。
会社が起こしていた訴訟については、裁判の期日が近かったこともあり、まずは社長が亡くなったことを裁判所に連絡して、裁判期日を延期してもらう必要がありました。
そのうえで、弁護士が、裁判所に提出された書類を確認して検討したところ、会社側で請求している債権があることを立証するための証拠が不十分であることがわかりました。
その上、事情を知っている代表取締役が亡くなっていることもあり詳細がよくわからなくなっていました。そのため、訴訟を継続しても勝訴できる見込みが薄く、また、仮に勝訴できたとしても、相手方には回収できるだけの資産が無さそうであるということもわかりました。
これらの点を踏まえて、弁護士として、訴訟による請求を続けるよりも、早期に会社を清算する方が望ましいと判断し、破産管財人を通じて訴訟での請求の放棄を行ってもらうことにより、訴訟を終了させることにしました。
会社では、代表取締役が亡くなったため、その時点で予約が入っていた業務以外は実施せずに、会社の営業を停止していました。
従業員は解雇しましたが、雇用契約書がなく、最終月の給与に関して、基本給以外の手当の部分はどのように計算されていたのか分かりませんでした。
破産の申立にあたっては、すべての債権者とその債権者に対する債務の額を一覧にして申し立てる必要があります。そのため、未払い賃金債務についても、金額を特定する必要がありました。
本件では、未払い分の賃金については、とりあえず、取締役が覚えている内容で計算し、従業員からその内容について意見を聴取したうえで管財人に引き継ぐことにしました。
そのうえで、従業員が未払賃金立替制度を利用できるようにしたため、未払い賃金の一部については、従業員に支給を受けさせることができました。
「未払賃金立替払制度」は、企業倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立替払する公的な制度です。この制度の詳細は以下の厚生労働省のホームページをご参照ください。
取引先に対する債務額についても、債務額を特定する必要がありました。
ところが、外部の取引先については社長のみが把握しており、取引内容がわりませんでした。
そのため、残されていた契約書のファイルから、弁護士が契約を調べて、債権者に問い合わせを行い、並行して、不明な部分は聴き取りを行うなどして、債務額の調査をおこないました。
このような調査の結果、債務額を一応特定し、破産申し立てをすることができました。
本件では、代表取締役が急に亡くなったために、もう1人の取締役が1人で会社の経営をしないといけない立場に陥っていました。
しかし、取締役としては会社を続ける気がなく、どのように会社を清算すれば自分がこれ以上の責任を負わなくてすむかという観点からご相談いただきました。
弁護士が会社の状態を検討して破産申立をすることをおすすめし、また、弁護士が契約等を精査し、未払い賃金についても調査することで、相談者は会社を清算することができました。
相談者も、無事会社を清算することができほっとされたようでした。
本件のように代表取締役が急に欠けたことにより会社を清算することをご相談いただくケースもまれではありません。
また、代表取締役が亡くなるなどの事情がなくても、会社の経営を続ける気がなくなった場合には会社の存在に決着をつけることは必須です。
営業を停止しているからといって放置すると、取締役の責任を問われるケースもあります。会社の処理をどのようにしたらいいかわからない場合は早めに専門家である弁護士までご相談ください。
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また、法人破産の手続きの流れについては以下の記事でも解説していますのであわせてご参照ください。
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