今回の解決事例で書かれている内容(目次)
人材派遣会社で求人サイトを新設することになったのに伴い、「利用規約」を作成した事例です。
求人者がサイトに情報を登録する際に使用する「パスワード」及び「ID」を第三者に不正利用された際の責任の所在が不明確で発生する情報漏えいトラブルなどの「予想されるトラブルの防止」と、消費者契約法の適用に関する配慮が不十分で、利用規約の一部または全部が無効になる「消費者契約法への対応」を考慮した利用規約を作成しました。
▶参考情報:利用規約の作成方法についての解説は以下をご参照ください。
この求人サイトは、求人者の個人情報を求人者が登録することができる仕様になっていました。
その関係で、サイト運営者と求人者の間のルールを定める「利用規約」を作成する必要がありました。依頼者は、自身でこの利用規約の案を作成されていましたが、いくつかの問題点があり、修正の必要がありました。
たとえば以下のような問題点がありました。
問題点1:
求人者がサイトに情報を登録する際に使用する「パスワード」及び「ID」を第三者に不正利用された際の責任の所在が不明確で、「情報漏えいトラブル」が発生する危険がありました。
問題点2:
消費者契約法の適用に関する配慮が不十分で、「利用規約の一部または全部が無効」になる危険がありました。
今回の利用規約の作成のご相談内容について、担当した弁護士は、以下のとおりです。
「パスワード」及び「ID」を不正利用された際に「情報漏えいトラブル」が発生する危険があったという問題点についての見解。
この求人サイトでは求人者は個人情報を登録する際に、「ID」と「パスワード」を設定しますが、これが第三者に不正利用されると、求人者の個人情報が漏えいしたり、サイトに登録されている個人情報が第三者により無断で変更される危険があります。
そして、個人情報の漏えいや第三者による登録情報の無断変更が起こった場合、それによる損害をめぐって、個人情報を登録した求人者とサイト運営者の間でトラブルが発生する危険があります。
そこで、このようなトラブルにおいて、サイト運営者側の責任を問われることを防ぐために、利用規約には、以下の点を明記しておく必要があります。
依頼者自身が作成した利用規約の原案にはこの点が抜けていましたので、追記する修正を行いました。
消費者契約法の適用に関する配慮が不十分で、「利用規約の一部または全部が無効」になる危険があった点についての見解。
利用規約を作成する際にありがちなのはともかく自社に有利な内容にするために、一方的に自社に有利な規定を盛り込むということです。
自社の利益を守ろうとすること自体は正しいのですが、消費者保護の観点から、消費者にあまりに不利な内容は無効と判断される危険があります。
例えば、「消費者契約法10条」で、消費者の利益を一方的に害するような利用規約も無効になりうることが定められています。
そこで、消費者契約法の適用に関する配慮として以下の点が必要になります。
依頼者自身が作成した利用規約の原案では、消費者契約法の適用に関する検討が抜けていましたので、この点に対応する修正を行いました。
利用規約を作成する目的は、「契約内容を確定し、ユーザーとのトラブルを防止するため」です。そのため、どのようなトラブルが想定されるかを事前に検討し、対応策を利用規約に明記する必要があります。
今回のケースでは、「IDやパスワードを第三者に不正利用されるトラブル」や、それにより「登録情報が漏えいしたり不正に登録情報が変更されるトラブル」がありうることを想定しておく必要がありました。
また、せっかく自社に有利な利用規約を作っても、一方的に消費者に不利な内容の場合は、「消費者契約法」の適用等により、裁判所で無効と判断されてしまう可能性があります。そのため利用規約を作成する際には、裁判になってもできる限り有効と判断してもらえるように消費者契約法を意識した工夫をすることが必要になります。
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今回は、「人材派遣会社の依頼により、求人サイトの「利用規約」を作成した事例」について、ご紹介しました。他にも、今回の事例に関連した派遣関係の解決実績を以下でご紹介しておきますので、参考にご覧ください。
・派遣会社から労働者派遣契約書のリーガルチェックの依頼を受けた事例
・派遣先から派遣契約を期間途中で解除されたため、訴訟により解除後の派遣料金を回収した事例