今回の解決事例で書かれている内容(目次)
「不動産業」の事例です。
本件は、賃貸店舗の所有者からテナントに入っている飲食店に対する明け渡しの強制執行についてご相談をいただいた事例です。
咲くやこの花法律事務所にご相談になる前に、ご相談者は既に別の弁護士に依頼して、賃料滞納について裁判を起こし、テナントに滞納分の賃料の支払いを約束させる内容の和解を成立させていました。
しかし、テナントに入っていた飲食店は、裁判での和解の後も、所有者からの賃料の請求に応じず、賃料の滞納を続けました。
これに対して、前任の弁護士が、明渡しの強制執行に踏み切らず、いつまでも問題が解決しなかったため、強制執行によりテナントを退去させたいと咲くやこの花法律事務所にご相談いただきました。
テナントは建物の明け渡しに協力をせず、「滞納賃料を一部支払うので、店は続けたい」等と強制執行の手続きを引き延ばそうとしていました。
しかし、実際には賃料を支払いませんでした。
また、飲食店のテナントであったため、調理器具や食器、食品の在庫も多数あり、明け渡しの強制執行の際にこれらの物品の撤去の難航が予想されました。
しかし、弁護士がご相談を受けて、裁判での和解をもとに、直ちに強制執行を行い、店舗の明け渡しを強制的に実現させることができました。
この強制執行では、以下の点がポイントとなりました。
店舗所有者からのご依頼を受けて、弁護士からテナントに対して、再三にわたり退去の要求を行いました。
しかし、テナント側で店の営業を続けたいという意向が強く、退去に応じようとしませんでした。最悪の場合、テナント側が明渡しの強制執行の妨害を行うことも想定されました。
強制執行を行う時点で、店舗内に大量の調理器具や食器が残されている場合は、家主の責任で、最長1か月程度、倉庫内で物品を保管しなければなりません。
その場合、家主は大量の荷物の保管のため、保管料や処分費用を負担しなければならなくなるリスクがありました。
これを避けるためには、食材や大量の食器、調理器具などを、強制執行の前にテナント自身で自主的に店舗から引き揚げさせることが必要でした。
本件に関する担当弁護士の方針は以下のとおりです。
本件では、裁判での和解後も、テナントが賃料を支払わないまま営業を続け、これに対して、前任の弁護士も必要な手立てをとっていませんでした。
そのため、賃料を支払わないまま営業を続けるという異常事態が常態化してしまっていました。
このようなケースでは、まず、テナントに対して、新しい弁護士が就いたことにより、これ以上営業を続ける猶予や明渡しの時期について交渉をする予知がないことをはっきりと認識させることが重要です。
そのためには、裁判所に早く強制執行の申し立てをし、「明渡しの催告」につなげることが重要でした。
この明渡しの催告の日に、執行官が強制的に建物内に入り、実際に強制執行を行う実行日を滞納者に対して伝えることになります。
本件でも、テナントに対して交渉の余地がないことをはっきりと認識させるために、早期に強制執行の申し立てをして、明渡しの催告につなげる方針をとりました。
明渡しの催告のために、裁判所の執行官が現地を訪問した際、テナントはまだ飲食店の営業を続けていました。
執行官が強制執行を行うことを伝えたところ、かなり驚いた様子でした。そして、テナントは「家主にお金は支払うから待ってくださいと伝えてほしい」などと繰り返しました。
このように執行官が、強制執行の実行日などを伝えると、これまで平然と入居していた滞納者もあせり、何とか退去をしないで済む方法を考え出します。
今回の場合は、テナントが長年付き合いのある店舗所有者(相談者)に直接連絡して、何とか待ってほしい等と泣きつくことが予想されました。
このような際に、店舗所有者が少しでもテナントの話を聴いてしまうと、テナント側としては交渉の余地があるととらえて、なんとか明渡しを免れようと懇願してきます。
そのような事態になると、テナント側に自主的に物品類を引き揚げさせることができず、強制執行に多額の費用がかかることになってしまいます。
そのため、弁護士からご相談者に対して、あらかじめ、もし、テナントから連絡があっても、絶対にテナントの話しを聞いたり、対応をしないでほしいと伝えていました。
その後、弁護士の予想どおり、テナントから相談者に対して直接の連絡がありましたが、弁護士の事前のアドバイス通り、相談者にも毅然とした対応をしていただくことができました。
相談者がテナントからの連絡に全く対応をしなかったことから、その後、躍起になったテナントから、今度は、弁護士に対し、強制執行を延期してほしいと何度も電話やファックスがありました。
弁護士からはテナントに対して、相談者への直接の連絡を絶対にしないように求めるとともに、滞納賃料は至急支払うように要求し、かつ、強制執行は予定どおりに行うことをはっきり伝えました。
また、どのように懇願、抵抗しても、強制的に退去させる意思に変わりがないことを伝えました。
明渡しの強制執行ではこのような抵抗があるのが常です。
相手の要求に少しでも譲歩してしまえば、退去させる機会を失う恐れがありますので、相手に対する対応は十分注意する必要があります。
本件では、テナントが店に大量の調理器具や食器を保管していたため、強制執行当日にこれらの物品類の搬出をしなければならず、多くの作業員の手配、トラックの手配が必要で、これに多額の費用がかかることが予想されました。
そこで、弁護士はテナントに対し、テナント自ら、物品を自主的に撤去するように交渉しました。
具体的には自主的に撤去しない場合は、強制的に撤去させることになり、その費用も含めて、後日テナントに請求することになることを伝えて交渉しました。
また、強制的に撤去した場合、食器類や調理器具は処分することになり、テナント側の営業再開が難しくなることも伝えて交渉しました。
一方で、弁護士としては、相手が物品類を撤去せず、建物の中に放置したまま、連絡がとれなくなるなどの事態も想定しなければなりません。
そのような場合は強制的な撤去が必要になりますので、事前に物品の保管場所の確保や物品の運び出しに必要な人員の手配等を行いました。
明渡しの催告から、通常約3週間で明渡しの強制執行が実行されます。それまでの間、弁護士はテナントに対して、粘り強く退去の説得を試みました。
その結果、テナントもとうとう観念したのか、強制執行当日、特に相手の抵抗や妨害といった問題は起こりませんでした。
そのうえ、テナント側が事前に物品の引き取り業者を手配し、ほとんどの物品を自主的に引き取らせて退去させることができました。
店舗内に残った他の物品に関してはテナント側に所有権を放棄させ、廃棄処分することに同意させることができました。
その結果、物品の運び出しの費用や、物品の保管の費用がかからなくて済み、強制執行にかかる費用を少しでも減らすことができました。
本件では、裁判での和解後も、そのまま賃料を滞納して建物内にも居座り続けたテナントに対して適切に強制執行の手続きを行い、無事退去させることができました。
裁判で判決や和解を経ても、そのまま賃料を滞納して、居座り続けるテナントや入居者を退去させることは、容易ではありません。
強制執行の手続きを行っても相手の強い抵抗や妨害にあう可能性もあります。そのうえ、賃貸している建物内に多くの物品がある場合は、その物品の撤去や保管に多額の費用がかかります。
このような場合は、明渡しの強制執行に精通した弁護士に依頼することにより、相手の抵抗を排除しながら、できるだけ費用のかからない方法で、時間をかけずに明渡しを実現させることを目指す必要があります。
賃料滞納者への対応についてお困りの場合は、咲くやこの花法律事務所にご相談いただきますようにお願いいたします。
なお、明渡しの強制執行についての詳細な流れについては、以下の記事をご参照ください。
また家賃滞納時の賃料回収に関する参考情報もご紹介しておきますので、合わせてご覧下さい。
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