今回の解決事例で書かれている内容(目次)
本件は、アパレル会社から上着(カーディガン)を購入した客が、購入後約2年が経過した後に、「商品が色落ちし、ほかの衣類に色移りした」として、購入した商品についての代金の返金と、色移りした衣類に関する損害賠償を執拗に要求した事例です。
弁護士が、購入者に対して、本件の色うつりは商品の欠陥ではないこと、及び金銭の要求には答えられないことを明確につたえ、購入者の請求を断念させました。
本件では、以下の2点が争点になりました。
それぞれの争点の内容は以下の通りです。
他の衣類による色移りが、本件の衣類によるものでなければ、当然、販売会社に賠償責任はありません。 この点、販売した衣類と色移りしたという他の衣類に付着した色は同系統の色でしたが、濃淡に違いもあり、販売した衣類とは別の衣類による色移りの可能性も皆無とはいえない状況でした。
そして、因果関係については、法律上、損害賠償を請求する側が立証する責任を負担することが原則です。
そこで、「販売した衣類が原因で他の衣類に色が付着した」という因果関係が立証されたといえるかが問題になりました。
購入者からの請求の内容は、衣類に「色落ちする」という「瑕疵」(欠陥)があったことを理由として、「瑕疵」によって発生した損害賠償を請求するものでした。
「瑕疵」とは、商品の欠陥のことであり、「瑕疵」にあたるかどうかは、原則として、「物が通常有すべき品質、性能を欠いているかどうか」を基準に判断されます。
そこで、本件の衣類が備えるべき通常の品質として、「色落ちをしない」ことが求められるかどうかが争点となりました。
アパレル販売会社から、購入者からの損害賠償請求に対する対応の依頼を受け、弁護士が2つの争点についてそれぞれ以下の通り対応しました。
本件では、購入後2年がたってから、色落ちと色移りが主張されたケースであり、本当に、本件の商品の色落ちが原因で色移りしたのかも疑われるケースでした。
そこで、弁護士から、「因果関係については、損害賠償を請求する側が立証責任を負担すること」を指摘したうえで、「販売した衣類が原因で他の衣類に色が付着したこと」の立証がされていないことを指摘して、反論しました。
本件の衣類は、濃色の商品であり、洗濯により色落ちすることが通常予想できるものでした。
そこで、濃色の衣類については色落ち、色移りしないことが通常有すべき商品の品質とはいえず、商品の「瑕疵」にはあたらないことを主張して、反論しました。
本件では、相手が商品を購入した顧客であるということから、丁寧な対応をしようと心がけた結果、相手の要求がエスカレートしました。 そのため、金銭請求のほか、社長の直接の謝罪などを要求する電話が購入者から執拗にあり、会社の業務に支障がでていました。
弁護士が対応し、金銭支払いや社長による謝罪を明確に断った結果、金銭支払いなしで解決することができました。
たとえ商品を購入した客であっても不合理な金銭要求や謝罪要求をされた場合はきっぱりと断ることが必要です。あいまいな対応をすると、相手の要求がエスカレートし、相手の要求に応答しなければならない精神的な負担、時間的な負担が蓄積してくことになります。
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著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円