今回の解決事例で書かれている内容(目次)
本件は会社が処分に困っていたリゾート会員権について、弁護士が交渉をすることにより、会社が望む形での処分に成功した事例です。
本件で問題となったリゾート会員権は、会社が30年近く前に、福利厚生のために購入したものでした。当初は福利厚生施設として利用されていましたが、やがて利用されなくなりました。
会社としてはリゾート会員権の年会費などの費用が無駄なので会員権を処分して預託保証金50万円の取戻しをしたいと考えてリゾート施設の運営会社に連絡しました。しかし、預託金はあと1年半たたないと請求できないといわれました。また、逆に、これまで名義変更手続き費用や未払いとなっていた年会費が請求される結果となりました。
そこで、弁護士に相談がありました。
弁護士として会社の依頼を受けて交渉し、リゾート会員権を運営会社に引き取ってもらうことができました。
また、運営会社から請求を受けた「名義変更手続き費用」や「未払いになっていた年会費」についても支払いが必要のない内容で合意に至ることができました。
そのかわりに預託金の返還請求権を放棄することにし、交渉開始から約1カ月で会員権を処分することができました。
本件のリゾート会員権の処分には以下の問題がありました。
まず、会員権を処分するためには、譲渡する相手を会員自らがみつける必要がありました。
会員権の市場がないため、譲渡は容易ではありませんでした。
相談者の会社名および所在地が、リゾート会員権を購入した当時の会社名、住所と異なっていました。これは、合併や商号変更が原因でした。
しかし、会社が会員名変更について問い合わせところ、運営会社からは、現在の会社名で会員権を行使するためには、まず会員権譲渡の手続が必要と回答されていました。
その手続きの費用が高額だったため、会社はそのまま会員名の変更手続きをとらずに放置していました。
リゾート会員権の購入時に会社は運営会社に対し50万円を預託していました。この預託金は管理契約期間満了まで返金請求できない契約になっていました。
そして契約期間満了までは約1年半の期間がありました。つまり、1年半後でなければ、預託金を返還してもらえない内容になっていました。
管理契約では、毎年、運営会社から会員である会社に請求書が届き、会社が年会費を払うことになっていました。また、会員である会社は住所や会社名の変更について運営会社に届ける義務がありました。そして、届け出を怠ったことにより、運営会社に与えた損害は、会員が賠償責任を負うことになっていました。
会社は住所の変更や会社名の変更の手続きを行っておらず、そのため、運営会社からの年会費の請求書がとどかず払っていませんでした。
このような経緯から、会社は運営会社から支払していなかった2年分の会費を請求されていました。
まず、会社には会員権の譲渡先の当てはありませんでした。そこで、弁護士が依頼を受け、運営会社に会員権を譲渡する方針で交渉することにしました。
リゾート会員権の再販売は期待できないため、運営会社が譲受に難色をしめすことが予想されました。
そこで、弁護士から、運営会社に対して、運営会社が会員権の譲り受けに同意しない場合でも会社には共有持分を放棄することにより共有持分を処分できることを説明して交渉しました。
会社が共有持分を放棄した場合、持分は他の共有者達に吸収されます(民法255条)。このような持分の変動は管理規約に想定されておらず、運営会社としては望ましくない事態であると思われました。
また、後述するように、規約上の理屈として、共有持分の放棄により、会社が直ちに預託金返還請求権を得ることにもなります。
これらの点を説明し弁護士が交渉した結果、運営会社が会員権を引き受けることで合意することができました。
咲くやこの花法律事務所に依頼する前に、会社から運営会社に会社の名称、住所の変更手続きについて尋ねていました。これに対し運営会社は、会員の変更手数料30万円が必要という回答をしていました。
しかし、これは会員権を譲渡した場合の会員交替手続きの費用でした。これは、本件の会社には当てはまりません。会社は譲渡により会員権を得たのではなく、分割や商号変更により名称は変わったが法人格を承継したことにより会員権を承継していたためです。
会社としてはすでに必要のない会員権であり、いまさら会員の変更手数料を支払うことは心情的にも難しい面がありました。
そこで、弁護士から法人名の変遷経緯を説明し、会員権の譲渡ではなく、承継なので、会社による会員権の行使に、譲渡手続きは不要であることを主張して交渉しました。
その結果、会員の変更手数料について支払い義務がないことを運営会社に認めさせることができました。
会社が運営会社に預けた預託金は管理契約終了時に返還請求できることになっていました。しかし、この方法では管理契約の終了まで待つことになり、1年半かかることに加え、その期間の年会費の支払いが必要になります。また、使い道のない共有持分がのこり、税金だけを払い続けることになります。
そこで、弁護士が規約を確認したところ、管理契約の終了の場合以外にも、会員である会社が共有持分を失った場合に契約が終了することになっていました。
つまり、会社が共有持分を放棄すれば預託金をただちに返還請求できる契約内容になっていました。
そこで、弁護士からこの点を指摘して、「運営会社が会社の会員権を引取ると共に会社の未払年会費を免除する、その代わりに会社は預託金返還請求権を放棄する」という方針で交渉をし、合意を取り付けることができました。
本件は、30年近く前に購入したリゾート会員権をどのように処分するかという問題でした。
会社が利用せずに長期間放置したことやリゾート会員権の法的な仕組みから、処分するには複数の問題があり、会社では解決の方針が立たない状態でした。
そこで、弁護士が、会社の取りうる手段、権利を整理し、運営会社の権利との間で双方が譲りあって、解決する地点をめざして交渉しました。その結果、依頼から解決まで約1か月で解決することができました。
リゾート会員権の法的な仕組みは、本件のような共有持分と管理契約を組み合わせたもの以外にも利用権のみを契約で設定するものなどいろいろな形式があります。
そのため、解決方法や取り得る手段をケースバイケースで考えていくことが必要です。
会員権の処分にお困りの場合は咲くやこの花法律事務所までご相談ください。
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