今回の解決事例で書かれている内容(目次)
「ECサイト・ECモール運営会社」の事例です。
本件は、ECサイト運営会社から食料品の購入契約書のリーガルチェックを咲くやこの花法律事務所にご依頼いただいた案件です。
背景事情として、ご相談時、新型コロナウイルス感染拡大で食料品をオンラインで購入して宅配してもらう人が増えていました。来店での利用者が減少したので、従来オンラインでの宅配サービスを行っていなかった飲食店や生産者も導入を進めていました。
そして、オンラインで食料品を宅配してもらうという形態は、コロナウイルス感染終息後も続く可能性がありました。
ECサイト・ECモールを運営する場合、飲食店や生産者との契約、利用者との利用規約の作成が必要です。
本件の相談者のビジネススキームは、以下のようなものでした。
この場合、ECサイト運営会社は、生産者との関係で、食料品の購入に関する契約を締結する必要があります。
ご相談時、ECサイト運営会社が、飲食店・生産者との間の食料品の購入と発送に関する契約書の原案を作成していました。
そこで弁護士が依頼を受け、そのリーガルチェックをしました。
以下では、本件に関する弁護士が取り組んだ課題について解説いたします。
まず、食料品をオンライン販売して宅配するサービスを提供する場合、以下の2つの方法が考えられます。
今回の相談は、この方法でした。
この方法の場合、生産者や飲食店との間で食料品の継続的売買契約の締結が必要です。
出前館、Uber Eatは、この方法です。
この方法の場合、サイト運営会社は生産者や飲食店との間で、ウェブサイトへの出店に関するウェブサイト利用料その他の利用条件についての契約を締結する必要があります。
今回の契約のリーガルチェックのポイントは、以下の通りでした。
ここからは、担当弁護士の見解についてご説明していきます。
ここでは、上記「a~e」のポイントごとに、弁護士の見解を説明していきます。
飲食店との契約で、契約書の当事者として店舗名が記載されていることがあります。
しかし、店舗名だけ記載しても、店長と契約したことになるのか、店長とは別にオーナーがいる場合、オーナーと契約したことになるか、店長やオーナーが交代した場合に契約がどうなるのかといったことがわからず、あいまいになります。
そして、契約の当事者があいまいであれば、契約違反があった場合にも、誰にも責任の負担を求めることができなくなるおそれがあります。
そのため契約書の当事者は、店舗名ではなく、個人の場合は氏名、法人の場合は●●株式会社というような商号を記載するのが鉄則です。
ただし個人の場合、店舗名と個人をセットで記載しても構いません。例えば「店舗名」こと「氏名」というような記載です。
今回の契約は、ECサイト運営会社が飲食店や生産者から購入した食料品を消費者に販売するというビジネスモデルです。
生鮮食料品の場合、消費者との間で注文される前にサイト運営会社が生産者から食料品を購入してしまうと、賞味期限切れ等でロスが生じます。
そのため、サイト運営会社において在庫をかかえない運用にする必要があります。
具体的な運用の流れと留意点は以下のとおりです。
1,まず消費者からECサイト運営会社にオンライン上で商品の注文がされます。この注文の段階では、消費者とECサイト運営会社との契約は成立していません。
2,次にECサイト運営会社は、消費者から注文された商品について生産者や飲食店に購入の申込をします。購入の申込の際には、商品の発送時期についても明記します。
3,生産者や飲食店から購入の申込を承諾するという連絡があった時点で、生産者や飲食店とECサイト運営会社との契約が成立します。生産者や飲食店から承諾の連絡がされた後、ECサイト運営会社は、消費者に対して注文の確定を連絡します。
4,仮に、商品の在庫がない等の理由で生産者や飲食店から、食品の販売を断られた場合、ECサイト運営会社は消費者に対し注文に応じることができない旨の連絡をします。
販売ができるかどうかについての生産者や飲食店から連絡が遅れることも考えられますが、いつまでも消費者を待たせることはできません。
そこで契約書には、一定期間が経過しても、生産者や飲食店から回答がない場合、契約が成立しない旨の記載もあった方がいいです。
ECサイト運営会社と飲食店・生産者との間の契約書における具体的な条項例は、以下のとおりです(甲が飲食店・生産者、乙がECサイト運営会社)。
代金の支払時期・手続がはっきりしない契約書も多いですが、代金の支払は契約書の最重要事項なので明確にしましょう。
当たり前のことのように思えますが、締め日や請求の期限等が明記されていない契約書が多いです。
具体的な条項例は、以下のとおりです(甲が飲食店・生産者、乙がECサイト運営会社)。
表明保証条項とは、取引の対象となる商品について一定の性能や品質を保証するものです。
例えば、動産の売買では、第三者の知的財産権を侵害していないことや検査機関で一定の検査に合格したことなどについて売主が買主に対し保証する内容の契約条項を設け、保証に違反した場合、買主が被った損害を賠償するという内容となることが多いです。
食料品の場合、「腐ってしまう」、「不良があった場合に人の健康に影響する」という特徴があります。また、食料品の産地に偽装等があった場合には運営会社は消費者からの信用を失う危険があります。
表明保証条項を作成する場合もこのような食品の特殊性を考慮すべきです。
ECサイト運営会社と飲食店・生産者との間の契約書における具体的な条項例は、以下のとおりです(甲が飲食店・生産者、乙がECサイト運営会社)。
インターネットで食品を販売するためには、美味しそうにみえる食品の写真をウェブサイトに掲載することが不可欠です。
写真を運営会社が撮影することも考えられますが、生産者や飲食店が撮影した食品の写真を提供してもらって、これをウェブサイトに掲載することが多いです。
生産者や飲食店が撮影した写真については、生産者や飲食店の著作物です。
そのため、契約書には、運営会社による写真の利用が無料で、また、運営会社において必要な加工をすることが許されることを、契約書に記載する必要があります。
具体的な条項例は、以下のとおりです(甲が飲食店・生産者、乙がECサイト運営会社)。
今回の契約は、法的には動産の継続的売買契約に分類することができますが、食料品であることの特殊性を考慮したリーガルチェックが必要です。
リーガルチェックのメリットは、「法的に問題のない契約書の作成」にとどまりません。第三者の視点を導入して、契約書を見直す過程で自社が提供するサービスが明確になるというメリットもあります。
リーガルチェックの過程で「サービス内容そのものが現実的か」、「契約相手方にとってわかりにくくないか」などを弁護士のサポートを受けながら、再検証することができるのです。
契約書のリーガルチェックの重要性については以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。
咲くやこの花法律事務所の「契約書に強い弁護士への相談サービス」への今すぐのお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
今回は、「ECサイト運営会社の依頼を受けて、食料品の継続的売買契約についてリーガルチェックを行った事例」について、ご紹介しました。
他にも、各種契約書や利用規約など、今回の事例に関連した解決実績を以下でご紹介しておきますので、参考にご覧ください。
・リフォーム会社の依頼を受けて、特定商取引法、割賦販売法、改正民法等を反映したリフォーム工事契約書を作成した事例
・リゾート会員権販売事業に関して、特定商取引法の要件を満たす契約書を作成した事案
・業界新聞より依頼を受け、インターネット上で新聞記事を閲覧できるサービスの利用規約を作成した事例
・派遣会社から労働者派遣契約書のリーガルチェックの依頼を受けた事例
・中国企業との化粧品販売に関し、売買基本契約書を作成した事例