今回の解決事例で書かれている内容(目次)
本件は、業界新聞を発行する新聞社(以下、「依頼者」と言います。)より、新しく開始するサービスの利用規約を作成して欲しいという依頼を受け、利用規約を作成した事案です。
サービスの内容としては、新聞の購読者が利用できるサービスで、インターネット上で過去の新聞の記事を閲覧・保存出来るというサービスでした。
依頼者としては、購読につなげることも狙ったサービスであるので、購読者でない方を対象に、仮会員となることにより期間限定でサービスを体験できることにしたいという希望を持っていました。
そのため、この希望も踏まえて、利用規約を作成しました。
以下では、本事案のポイントを解説していきます。
利用者が同意してサービスを利用することにより、利用規約の内容をもって、利用者と契約を締結したことになります。
それにより、契約を締結したことを根拠として、利用料の請求などの法律的な対応が可能になります。
利用者から問い合わせや抗議があった場合に、「利用規約の第~条に書いています」という対応をすることができ、スムーズに対応することが可能です。
万が一、抗議を受けた場合でも、利用規約に書いてあることを説明することで、それ以上に発展せずに解決することが多いです。
ここでは、上記「a~f」のポイントごとに、担当弁護士の見解を説明をしていきます。
今回の依頼者の希望として、期間限定でサービスを利用することが出来る仮会員を設定することがありましたので、仮会員と本会員を明確に書き分けました。
明確に書き分けておくことで、仮会員が受けられるサービスの範囲の制限するためです。
また、仮会員が1回限りのものであることも明確にしておくことが重要です。繰り返し、仮会員の登録を申し込まれてしまう事態を防ぐためです。
会員ができる行為を明確にしました。
仮会員と本会員を設定するので、それぞれについて、出来ることを明確にすることが必要でした。
上記「a」及び「b」を踏まえた条項例は以下の通りです。
第1項 「会員」には、「本会員」と「仮会員」があります。
第2項 「本会員」とは、当社と購読契約を結び、会員登録をした法人又は個人です。
第3項 「仮会員」とは、当社と購読契約を結ばずに、仮会員登録をした法人又は個人です。仮会員は、○週間の期間限定で、本サービスを利用することが出来ます。仮会員への登録は、同一の法人又は個人につき1回限りです。
料金を明確にしました。
今回は、依頼者の意向として、当面は無料で将来的に有料とする可能性があるという意向でしたので、無料であることと将来有料となることがある旨を明確に書くことにしました。
明確に書くことで、会員も安心して利用することが出来ます。もし、有料とするのであれば、金額や支払方法を明確に書いておくことが重要になります。
上記「c」を踏まえた条項例は以下の通りです。
本サービスの利用は無料とします。ただし、今後、本規約の改訂によって、有料となることがあります。
新聞記事の著作権は、作成者である依頼者にあります。
会員は、新聞記事を保存することや印刷することにより、利用することが想定されますが、著作権が新聞社にあることを明確にし、転載などを禁止しました。
上記「d」を踏まえた条項例は以下の通りです。
記事の著作権など本サービスに関する知的財産権は全て当社に帰属します。会員が本サービス利用をしているとしても、当社は知的財産権の許諾はしておりません。したがって、会員は記事の無断転載・流用は一切出来ません。
禁止行為を明確に書きました。
禁止行為の規定は、利用停止などの対応をする根拠となります。また、利用停止などの対応について「不当である」との抗議があった場合でも、「禁止事項に書いてあります」と伝えることで、抗議にスムーズに対応することができます。
上記「e」を踏まえた条項例は以下の通りです。
会員は、本サービスを利用するにあたって、次の行為をしてはいけません。
(1)本規約に違反する行為
(2)当社、会員その他第三者の知的財産権を侵害する行為
(3)第三者のIDやパスワードを利用して、本サービスを利用する行為
(4)当社及び会員に対する誹謗中傷する行為、暴力行為、威嚇行為、迷惑行為
(5)当社のネットワーク又はシステムに、不正にアクセスし又はしようとする行為
(6)本サービスのネットワーク又はシステムに過度に負荷をかける行為
(7)法令等および公序良俗に反する一切の行為
(8)前記各号の行為を容易にする行為
(9)前記各号の他、当社が不適切と判断する行為
システムのエラーなど緊急事態の場合に、会員の利用を停止して、メンテナンスを実施することがあると思います。
しかし、メンテナンスの都度、依頼者から許諾を得ることは現実的ではありません。そのため、利用規約で予告をしておくことが重要です。
また、会員に問題がある場合に利用停止などの対応をとることが必要となることもありますので、利用停止とすることがあることを予告しておくことも重要です。
上記「f」を踏まえた条項例は以下の通りです。
当社は、以下のいずれかに該当する場合には、会員に対して事前の通知をすることなく、本サービスの停止や閉鎖を行うことがあります。
(1)ネットワークやシステムのメンテナンス作業を行う場合
(2)天変地異(地震、風水害、火災、停電等)により本サービスの運営が出来なくなった場合
(3)何らかの事故により、ネットワークやシステムが停止した場合又は本サービスの運営が出来なくなった場合
(4)その他、当社が停止等を必要と判断した場合
第〇条(利用できない場合について)
当社は、会員となろうとする者又は会員が、以下のいずれかの事由に該当すると当社が判断した場合に、会員の登録をお断りし又は予告なく利用を停止することがあります。なお、お断りし又は利用を停止した理由の開示はしておりません。
(1)本規約に同意しない場合
(2)本規約に違反した場合
(3)当社との契約等の合意内容に違反したことがある者又はその者の関係者である場合
(4)関係法令や関係規則に違反した場合
(5)会員登録の際に入力した情報に虚偽の内容があった場合
(6)当社に対して誹謗中傷行為、暴力行為、威嚇行為、迷惑行為をした場合
(7)反社会的勢力の関係者である場合
(8)前記各号のほか、会員として適切でない場合
会員の中には、サービスを利用してみて、思っていたものと違うという印象を持つ人がいる可能性があります。
そこで、利用規約に沿った内容のサービスは提供しますが、それを超えて利用者が期待する有用性があることまでは、保証しないことを明確にしました。
また、無料で過去の記事の閲覧及び保存が出来るというサービス内容から、万が一依頼者の都合で利用停止やシステム上の不具合が発生しても、会員が損害を被るということは想定しがたいです。そのため、あらかじめ依頼者が責任を負わないことを明確にしました。
これにより、会員から法的根拠がない損害賠償請求を予防することが可能になります。
上記「g」を踏まえた条項例は以下の通りです。
第1項 当社は、本サービスが会員の利用目的に適合すること、会員が期待する機能、商品的価値、正確性、有用性を有することを保証しません。
第2項 当社は、本サービスの停止及び閉鎖、会員登録の消失や抹消、本サービス上のデータ等の消失や抹消などに関して、会員が被った損害について賠償する責任は負いません。
本件では、弁護士が依頼者からサービスの内容を丁寧に聞き取り、それを踏まえて利用規約を作成しました。
その結果、依頼者の希望を踏まえつつ、会員とのトラブルを可能な限り回避することが出来る内容で作成することが出来ました。
利用規約の作成においては、ネット上にあるひな形をそのまま利用するだけでは適切とは言えません。
サービスの内容を踏まえた修正が必要になります。適切でない利用規約を利用していると、後のトラブルの種になってしまうことがあります。
そのため、利用規約の作成に詳しい弁護士に相談し、作成を依頼されることをお勧めします。
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今回は、「業界新聞より依頼を受け、インターネット上で新聞記事を閲覧できるサービスの利用規約を作成した事例」について、ご紹介しました。
他にも、各種契約書や利用規約など、今回の事例に関連した解決実績を以下でご紹介しておきますので、参考にご覧ください。
・ECサイト運営会社の依頼を受けて、食料品の継続的売買契約についてリーガルチェックを行った事例