従業員に対する退職勧奨のトラブルで労働審判を起こされたが、会社側の支払いなしで解決した事例
労働問題・労務の解決実績

従業員に対する退職勧奨のトラブルで労働審判を起こされたが、会社側の支払いなしで解決した事例

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    • 弁護士  片山 琢也
    • 咲くやこの花法律事務所  弁護士  片山 琢也

      出身地:大阪府。出身大学:京都大学法学部。主な取扱い分野は、「労働関連(組合との団体交渉、就業規則や契約書作成・チェック、残業代請求・解雇トラブルへの対応、従業員のメンタルヘルスから職場復帰へのアドバイス、従業員間のトラブルへの対応等)、債権回収、システム開発トラブル、建築業の顧客トラブル対応、インターネット上の悪質記事の削除請求など」です。

    1,事件の概要

     

    本件は、重大なミスを繰り返すなどの問題があった従業員に対して会社が退職勧奨したことについて、従業員が退職の強要であったなどとして、労働審判で金銭的な補償を求めた事案です。

     

    ▶参考:労働審判制度とは?

    不当解雇」や「未払い残業代」などの労働トラブルで、従業員と会社のトラブルを通常の裁判より簡略的な手続で解決する裁判所の手続です。

    また「労働審判」については以下に詳しく解説していますので参考にご覧下さい。

    労働審判の解説について詳しくはこちら

     

    2,問題の解決結果

     

    労働審判において、裁判所に、「会社からの退職強要はなかった」と認めてもらうことに成功し、金銭支払いなしで従業員退職の解決ができました。

     

    3,問題解決における争点

     

    本件では、従業員が重要なミスを何度も繰り返し、指導しても改まらないために、会社が従業員に対して退職勧奨を行い、従業員がこれに応じて退職したという経緯がありました。

    ところが、従業員は退職を強要されたと主張し、2か月分の給与相当額の金銭補償を求めて、労働審判を起こしました。

    労働審判では、「退職が強要によるものか、合意によるものか」が問題となりました。
    具体的な争点は以下の通りです。

     

    (1)「退職が強要によるものか、合意によるものか」の争点について

     

    争点1:
    退職勧奨をされても仕方がない原因が従業員にあったかどうか

    従業員が退職に合意したといえるかに関連して、前提として退職勧奨をされても仕方がない事情が従業員にあったのかどうかが問題となりました。

     

    争点2:
    退職についての話し合いの具体的状況から、退職の合意があったといえるかどうか

    退職についての話し合いの具体的状況から、会社からの不当な退職強要ではなく、退職について合意があったといえるかどうかが問題となりました。

    このような点が、本件の問題解決における最大の争点になりました。

     

    4,担当弁護士の見解

     

    労働審判では、各争点について会社側弁護士として、以下の通り主張しました。

     

    争点1:
    「退職勧奨をされても仕方ない原因が従業員にあったかどうか」について

    退職勧奨に至るまでに、会社としては十分に指導をし、従業員に挽回の機会を与えたかが、退職合意の有効性を示す一つの事情となります。

    再三の指導にもかかわらず改めることができなかったために、従業員も納得して退職勧奨を受け入れたと言えるからです。

    本件では、この従業員は部門の責任者の立場にある者でした。しかし、この従業員は責任者として求められる最重要事項について、同じミスを3回も繰り返していました。そこで、ミスのたびに、会社の誰がどのような指導をしたか、当時の状況を詳細に労働審判で主張し、会社が退職勧奨したことの合理性を裁判所に説明しました。

    また、従業員のミスの内容や重大性を裁判所に理解してもらうために、会社のビジネスモデルや従業員が担当していた業務の内容について、わかりやすい説明を行いました。

     

    争点2:
    「退職についての話し合いの具体的状況から、退職の合意があったといえるかどうか」について

    退職の合意を裁判所に認めてもらうためには、退職についての話し合いの場面で、会社から従業員に無理に退職を迫るような状況になかったことをわかりやすく具体的に説明する必要があります。

    そこで、退職についての話し合いの場に具体的に誰が立ち会い、どのような話をしたのかを労働審判で詳細に説明しました。

    本件では、従業員は「労使の力関係から言いたいことも言えず、退職を強要された」などと主張していました。
    しかし、話し合いに立ち会った会社側の責任者とこの従業員は、古くからの友人関係にありました。そのため、この従業員が主張するような、「労使の力関係から言いたいことも言えなかった」などとは到底いえない状況であったことを主張して反論しました。

    また、退職合意の後、従業員からは会社に対する感謝を述べると共に、新たな職場で前向きに頑張っていくという内容の手紙が会社に送られていました。これも証拠として提出し、従業員が述べるような不当な退職強要などはなかったことを裁判所に説明しました。

    以上の弁護活動により、裁判所にも、退職が合意によるものであると理解をしてもらうことができました。

    なお、裁判所からは、退職は合意によるものではあるが、円満解決のために会社からいくらか金銭を支払って和解してはどうかという提案がありました。しかし、本件で会社が金銭を支払う理由が全くなかったため、裁判所からの提案を断った結果、裁判所も従業員からの金銭請求を一切認めない内容の審判を下しました。

     

    5,解決結果におけるまとめ

     

    本件では、退職に至る経緯を労働審判で丁寧に説明した結果、裁判所に全面的に会社の主張を認めてもらい、金銭支払いなしで解決することができました。

    なお、今回の事例でもわかるように、裁判所は円満解決のために、会社側に非がないと思われる場合でも、会社がいくらか支払って和解をしてはどうかと提案をしてきます。しかし、悪しき前例を作らないためにも、会社にまったく落ち度がない場合は、そのような和解は毅然と断り、会社の正当性を説明しなければなりません。今回も和解を断った結果、会社に金銭支払い義務なしという審判を裁判所から得ることができました。

    本件のように、合意による退職であっても、退職後に本心から合意していなかったとして従業員から訴えられることがあります。

    このようなケースに対する防御としては、退職時に退職届をとっていることが重要です。しかし、退職届をとっていても退職が強要であったなどと主張されてトラブルになることがあります。そのような場合は、退職に至る経緯を裁判所で丁寧に詳しく説明することが大切です。

    このように労働審判では、短い期間で裁判所より結論が出されてしまうため、スピーディかつ正しい対応が絶対に必要です。
    労働審判についてお困りの際は、早急に咲くやこの花法律事務所の労働問題の実績と経験が豊富な弁護士にご相談下さい。

     

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    7,【関連情報】退職勧奨に関するお役立ち情報

    ここでは、退職勧奨に関するお役立ち情報をご紹介いたします。

    以下も参考にご覧下さい。

     

    退職勧奨(退職勧告)とは?適法な進め方や言い方・注意点を弁護士が解説

     

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