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やる気のないベテラン社員の指導を弁護士がサポートして解決に至った事例

やる気のないベテラン社員の指導を弁護士がサポートして解決に至った事例

この解決実績を紹介する弁護士

  • 弁護士  渕山 剛行
  • 咲くやこの花法律事務所  弁護士  渕山 剛行

    出身地:北海道札幌市。出身大学:大阪大学法学部法学科。主な取扱い分野は、「著作権法、商標法、意匠法、不正競争防止法、労務・労働事件(企業側)、債権回収、インターネット上の違法記事の削除請求、発信者情報開示請求、歯科医院関連、顧問弁護士業務など」です。
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1,業種の紹介

 

「運送業」の事例です。

 

2,事件の概要

 

本件は、やる気がなくなった勤続20年以上の社員(以下「ベテラン社員」といいます)の指導をサポートした事案です。

ベテラン社員は、自身の問題行動の発覚による職種変更をきっかけに、勤労意欲を失いました。数時間で終わるパトロールを丸1日をかけて行ったり、毎月行うべき会議を行わなかったりなど、会社から見て問題のある態度で仕事をしていました。

職種変更により、新たにこのベテラン社員に任された仕事は、社内の安全管理であり、社員の安全に関わる重要なものでした。そして、現場で作業する従業員に積極的に声をかけて安全意識を常にもたせ、さらに安全性に関する現場の意見を吸い上げるという担当者の主体性が求められる仕事でもありました。

そのため、社長は、このベテラン社員に注意を促し、安全対策の提案をするなど積極的・自発的な業務への取組を命じ、指導をしました。しかし、ベテラン社員には、改善が見られず、会社としてどう対処すべきかがわかりませんでした。

そこで、このベテラン社員に対する今後の対応について、咲くやこの花法律事務所にご相談いただきました。

 

3,問題の解決結果

 

ご相談の時点で、会社としては、このままの就業状況であれば退職勧奨してやめさせたいという意向をお持ちでした。その後、弁護士が、会社から継続的にご相談を受け、指導方針や指導方法、業務日報の内容やその書かせ方などをアドバイスしました。その結果、本格的な指導開始から約2ヶ月で、ベテラン社員から退職の申し出があり、退職に至りました。

退職に至った理由は、想像になりますが、毎日業務日報による指導をされたことで、自分の思うとおりの楽な仕事ができなくなったことが原因だったと考えられます。

 

4,問題解決における争点(弁護士が取り組んだ課題)

 

以下では、問題解決において弁護士が取り組んだ課題について詳しく解説していきます。

 

(1)会社が求める業務を明示することが必要

本件で、ベテラン社員は、遅刻や欠勤をすることはありませんでした。毎日出勤し、会社が用意したチェックリストに基づく安全報告書と当日の業務概要を会社に提出していました。提出されたチェックリストには、問題のなかった事項には、〇が記載され、連絡事項などの若干のコメントが付されるなどしていました。社長からは、これらの資料をもとに担当弁護士に対して、ベテラン社員がいかにやる気がなく、仕事をしていないかをお伝えいただきました。

しかし、担当弁護士としては、当初、このベテラン社員がやる気がないかどうかが、率直にいってよくわかりませんでした。というのも、会社がベテラン社員に対して、具体的にどのような業務をさせたいのかが不明確でした。この社員は勤続20年以上のベテランであり、安全管理を含む管理者経験もありました。そのため、会社としては、安全管理のための業務内容は、自分で考えて対応して欲しいと考えていました。会社がベテラン社員にどのような業務をいかなる水準でやらせたいのかが明らかではありませんでした。

「やる気がない」というのは、会社が求めた業務を、社員がやろうとしていないと会社が判断することです。つまり、会社は、「会社が求める業務」に対する「社員の行動(業務)」を評価して、社員に「やる気がない」と判断をするのです。

そのため、社員にやる気がないといえるためには、まずは「会社が求める業務」を明らかにすることが必要でした。社員からしても、会社が何を求めているのかよくわからなければ、やる気がないと言われても、何をどう改善すればよいのかわかりません。

したがって、まずは会社がベテラン社員に求める業務を明らかにすることが必要であることをアドバイスしました。

 

(2)診断書が提出された場合は適切な対処が必要

会社と担当弁護士が、ベテラン社員に対して、会社が求める業務を明示するなど必要な対処を相談していたところ、ベテラン社員から診断書が提出されました。

診断書には、「適応障害」の診断名と共に「職場の人間関係のストレスが症状の原因と考えられる」との記載がありました。
会社は、社員を働かせるに当たって、心身の安全に配慮する安全配慮義務を負っています。そのため、適応障害の診断書が提出された以上、その社員が安全に働ける状態にあるのかを確認して、必要な対処をすることが必要となります。

 

▶参考:裁判例の中には、体調不良を理由に欠勤を繰り返している社員について精神面の不調がうかがわれる場合は、会社として、単に体調を聴くだけでは不十分で、病院名、診断名、服薬の有無、薬品名等を尋ねて不調の程度を具体的に把握する義務がある旨を判示したものもあります(東京高等裁判所判決平成27年2月26日、ティーエムイー事件)。

 

弁護士が診断書を確認したところ、診断書には、休業を要する旨の記載はありませんでした。また、「職場の人間関係のストレス」が何を指しているのかよくわかりませんでした。そのため、会社に対して、上記の裁判例を踏まえた病状等の聴き取りや、診断書の内容を確認するための面談をするようにアドバイスをしました。

 

▶参考情報:会社の安全配慮義務については以下で解説していますので併せてご参照ください。

安全配慮義務とは?根拠となる法律、違反事例や対策などを詳しく解説

 

(3)ベテラン社員から病状の聴き取りを行う

会社がベテラン社員に聴き取りを行ったところ、以下のような点が明らかになりました。

 

  • ・数か月前から不眠と気分のモヤモヤ感があったが、現在は軽減はしている。
  • ・現在服薬はしておらず、運動療法という形で、運動を医者に勧められている。
  • ・医師から休業が必要との診断はされていない。
  • ・自分も休業が必要であるとは感じていないし、その希望もない。
  • ・就業に当たってのなんらかの配慮をして欲しいという具体的な希望も現時点ではない。
  • ・診断書に記載のある「職場の人間関係のストレス」は、部署異動のために不慣れな環境での就業のことを指している

 

会社として、聴き取りの結果、ただちに休職をさせる必要性までは感じませんでした。もっとも、何らの配慮もせずに、会社の求める業務を行わせた結果、ベテラン社員から症状が悪化したと主張される懸念が消えませんでした。そこで、ベテラン社員の同意を取り、主治医への医療照会により、より詳しい病状や原因、就業の可否の回答をもらうこととしました。

主治医への書面による医療照会を行ったところ、「強い不安を感じない職場の人間関係」において業務をさせることという抽象的な留保が付いたものの、「就業は可能である」との回答を得ました。そのため、会社として社員の体調面を注視しながらではあるものの、当初予定した通りに「会社が求める業務」を明示して、業務を行わせることとしました。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

前述のティーエムイー事件の事案では、診断書は提出されていません。そのため、この裁判例を踏まえると、仮に診断書が提出されなかったとしても、社員の体調不良が伺われる場合、会社は、病院名、診断名、服薬の有無、薬品名等を尋ねて不調の程度を具体的に把握する義務があると考えられる点に注意が必要です。

従業員に精神疾患の兆候が出た際の会社の正しい対応方法は以下で解説していますのであわせてご参照ください。

▶参考情報:従業員に精神疾患の兆候が出た際の会社の正しい対応方法を解説

 

(4)やる気のない社員に対する指導方法をアドバイス

 

1.会社及び社員の状況を踏まえた指導チームの立ち上げ

主治医への医療照会の後、会社がベテラン社員と面談をしたところ、ベテラン社員から、実は社長との業務に関する指導面談に強いストレスを感じている旨の申し出がありました。一般的に、このような社員からの申し出があったとしても、適切な指導を行っている限り、必ずしも会社に対応義務があるわけではありません。もっとも、社長が職務熱心のあまり、指導に力が入りすぎてしまう点は、弁護士も把握していました。また、「強い不安を感じない職場の人間関係」に言及した主治医の診断もありました。

そこで、弁護士から会社に対し、社長をベテラン社員の指導担当にすることは避けた方が良いと助言しました。そして、この件で弁護士とやり取りをしていた管理部の社員に指導を担ってもらうこととしました。

管理部の社員は、ベテラン社員の方が自分よりも社歴が長いことなどから、指導担当となることを躊躇していました。しかし、弁護士と社長が説得し、かつベテラン社員との面談時には、親会社出身の社外取締役を立ち会わせることを提案して、なんとか引き受けてもらいました。当然、社長や弁護士、社外取締役がチームとして指導をサポートする旨も伝えました。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

このように、社員の指導に当たっては、個別の事案に応じて、指導チームを立ち上げることが必要です。指導チームの立ち上げは、指導担当社員の負担を軽減させる意味でも、また、複数の視点からの指導を可能にするという意味でも、非常に有用です。

 

2.会社が求める業務の明示

ベテラン社員に対して、会社が求める業務を行ってもらうため、業務命令により、会社が求める業務を明示しました。

本来は、業務マニュアルのようなものを提示すべきですが、そのようなものがないことも多く、マニュアルの提示は現実的には難しい面もあると思います。本件でも、業務マニュアルを提示することまではできませんでした。そのため、「〇〇の業務については、〇〇を行い、行った内容を具体的に業務日報に記載すること」など、業務日報への細かな記載を命じることとしました。

会社が業務日報の記載欄を作りこみ、ベテラン社員が毎日やるべきことに関する記載欄を業務日報に設けました。例えば、現場の職員と積極的にコミュニケーションをとってほしいので、日報の記載欄に誰とどんなコミュニケーションをとったかを記載する欄を設けました。

これにより、日報を記載させることで、ベテラン社員に対して、会社が求める業務を行わせ、かつ行っているかの確認を行うこととしました。

 

3.業務日報の作成及び面談による指導

 

(ア)毎日日報を作成、提出させる

会社が求める業務を明示するとともに、それに対して実際にこのベテラン社員がどのような業務を行ったかを明らかにすることが必要でした。そのためには、ベテラン社員に当日行った業務を記録化してもらう必要があります。本件では、安全管理を行うべき場所が主に社外であったため、指導担当者がベテラン社員の業務を直接確認することが難しい状況でした。そのため、業務の遂行状況は、ベテラン社員からの報告により明らかにするしかなく、当日行った業務の内容及びその時刻を日報に記載してもらうこととしました。

会社が求める業務を明示するため、日報に記載させることにした事項は、以下の通りです。

 

  • ・本日の業務内容(時刻、業務内容等を記載)
  • ・本日の目標
  • ・目標に対する成果等
  • ・安全に関して現場とコミュニケーションを取った人物及び内容の明示
  • ・注意やアドバイスを受けた内容
  • ・安全指導を行う上での自身の不明点と、不明点の解決に向けての行動
  • ・チェックリストや手順書など書類の確認や見直し等を行った場合の具体的内容
  • ・明日の目標
  • ・パトロール時のチェックリストに基づく各項目の評価
  • ・安全に関する会社や取引先からの要請事項
  • ・自身が行った安全指導の内容
  • ・安全に関する提案内容
  • ・事故等のトラブル報告
  • ・パトロールをする中での課題や反省点

 

(イ)いい加減な仕事は許さないという姿勢を日々見せ続ける

実際にベテラン社員に求めた内容を見てみると、特に高度な内容を求めたものではありません。もちろん、業務を行う中で、手順書の見直しを行う場合などは、専門的な指導やここまでのものを作成して欲しいなどの指導をすることはあります。しかし、基本的には、自身の不明点をそのままにせず、日々目標をもって業務に取り組み、かつその日あったことを詳しく報告してもらうというものでした。

やる気のない社員の場合、このような日報を作成して日々の業務報告を行うことも難しい場合が多いです。現に、このベテラン社員も、業務時間に謎の空白時間があったり、記載事項の一部を空欄で提出したりと、日報の記載内容からして、会社の求める業務ができていないことが明らかになる部分もありました。

また、やる気のない社員は、自身のやる気のなさに自覚があることがほとんどだと思われます。しかし、それを合理的な理由なく会社のせいにしてみたり、このままでも「まぁいいか」と考えているところに、会社との認識の「ズレ」があります。

そのため、社員自身の足りない部分を自覚させ、会社としてはいい加減な仕事は許さないという姿勢を日々見せ続けることが必要です。指導を継続することで、社員に会社の認識とのズレを認識させ、修正する機会を与えることができるのです。

そのため、日報に対しては、毎日コメントを返すことで、必要な指導を行うことが重要です。会社と社員の認識のズレを修正するために、日報を記載させるだけでは意味がなく、日報に基づいて日々指導を行うことが大切です。本件でも、日報にコメントを毎日返す形で指導を継続してもらいました。そして、担当弁護士は、会社から日報を送ってもらい、ベテラン社員の日報への記載内容と、それに対する会社の指導内容を確認し、具体的なアドバイスを行いました。

 

(ウ)定期的な面談による指導を行う

管理部の社員には、2週間ごとに業務日報をもとにベテラン社員との面談を行ってもらいました。これは、ベテラン社員の体調の確認を行うとともに、何度も同じ指摘を受けている部分については改めて直接指導を行うためです。この面談には社外取締役も立ち会ってもらいました。面談にあたっては、事前に指導チームに日報を見返してもらい、改善が見られない部分の指摘や、会社の方針や要望などの伝達事項を確認してもらいました。

 

(5)指導に大きな効果が感じられない場合の対応

 

1.指導チームにあせりが見え始める

問題社員の指導中、必ずご相談をいただく点があります。

それは、「指導の効果が感じられない」というものです。指導を継続しても、対象社員の反抗的な態度が変わらなかったり、同じような問題行動を繰り返して改善が見られないというものです。

本件でも、指導チームによる指導から1ヶ月ほどが経過しても、ベテラン社員の業務遂行に大きな改善は見られませんでした。ベテラン社員が反抗的な態度を取ることはありません。しかし、日報の記載内容は雑で、何をしていたのかよくわからなかったり、前日の記載内容と同じ内容をそのまま記載するなどすることもありました。同じような指導が増えつつある状況となり、指導チームにも焦りが見えました。しかし、弁護士は、会社の担当者に対して、いつも同じことを伝えます。

「必ず本人に指導は効いています。当初の方針通りに指導を続けてください。」

 

2.正しい指導を継続する

本件では、会社が当初の計画通り、毎日日報を記載させ、それをチェックしたうえで、適切な指導コメントをしていました。2週間に1度の面談でも、このベテラン社員の問題点を的確に指摘しつつ、このように業務を行ってくださいなど具体的な業務指示ができていました。会社の対応に問題があれば、その点を改善するように会社にアドバイスを行いますが、本件はそうではありませんでした。

そのため、会社が求める業務内容がベテラン社員に伝わっていないことはあり得ず、あとはベテラン社員が指導をどう受け止めるかの問題でした。

また、指導を受けたからといって、それまで自分の基準のみで仕事をしてきた社員が、劇的に変化して、会社が求める基準で仕事ができるようになることはまずありません。ある程度の時間はかかります。当然、この点は、事前に会社に説明をしているのですが、やはり実際に指導をやり始めて1ヶ月ほどの時間が経過すると、本当にこのやり方で大丈夫かどうかが不安になってきます。

そのため、弁護士として、これまでの経験も踏まえ、「このやり方で大丈夫です。継続しましょう。」と指導チームを勇気づけるのです。このような役割も、問題社員対応のアドバイスをする弁護士に求められるものであると考えています。

 

▶参考情報:問題社員を指導する方法については以下の記事でも解説していますので併せてご参照ください。

問題社員を指導する方法をわかりやすく解説

 

5,担当弁護士の見解

 

担当した弁護士の見解は、以下のとおりです。

 

(1)やる気がないことを内心の問題ととらえないこと

 

やる気がない社員の対処に当たり、初めに、なぜその社員にやる気がないかを考えなければなりません。有休が取れない、残業代を支払っていない、新人に全く指導をしていないなど、会社側に明らかな問題がある場合は、その改善が必要です。

本件は、冒頭でも触れた通り、ベテラン社員がやる気を失った原因は、自身の問題行為が発覚して職種を変更されたことにあります。問題行為の内容には触れませんが、会社に非がある内容ではありませんでした。経営者の考え方や、理念、仕事のやりがいなどの問題でもありません。あくまで、このベテラン社員の問題でした。

そして、会社から見た「やる気がない」とは、「会社が求める業務」を「社員がやろうとしていない」と、会社が判断することです。やる気の問題を「内心の問題」ととらえると、他人の心をどう変えるかという難しい問題になってしまいます。あくまで客観的な部分から対処できるように考えた方が良いです。

そのため、会社が何を求め、社員がそれに対してどう行動したかを客観的に明らかにして、その差を埋める指導を行うことが、やる気のない社員への対処ということになります。その結果、業務遂行に改善が見られれば問題はありません。業務遂行に改善が見られなければ、方法の検討は必要ですが、会社を辞めてもらう方向で対処することになります。

このような考え方をもとに、ご説明したような方法で、やる気のない社員への指導とその記録を積み重ねることが、解決への近道です。

 

(2)精神疾患の対応には慎重な判断が必要

 

本件ではベテラン社員への対処を検討中に、適応障害の診断書が提出されました。

最初にこのベテラン社員から診断書を受け取った管理部の社員は、ベテラン社員から「君らのせいで病気になった」と言われ、診断書を渡されたとのことでした。後の聴き取りでベテラン社員はこの発言を否定したため、事実はわかりません。ただ、弁護士から見ても、ベテラン社員が、診断書を会社に提出した理由が判然としませんでした。適応障害の診断書を提出することで、自身に対する会社の動きを牽制しようという意図があった可能性もあるように思います。

確かに精神疾患の社員には慎重な対処が必要です。会社として安全配慮義務を尽くすため、必要な情報を収集し、それらをもとに適切な対処を取らなければなりません。

しかし、診断書があるからといって、休職させるわけでもなく、ダラダラと出勤させながら必要な指導を怠れば、解決が遠のくだけです。かといって、本人や主治医から情報を収集せずに指導を強行し、精神疾患が悪化した場合や、解雇などの手段を取った場合は、紛争が泥沼化する可能性が高いです。精神疾患の診断書が出た場合であっても、適切な対処をするために、早めに問題社員対応に精通した弁護士にご相談をいただくことが重要です。

 

(3)適切な指導の継続には弁護士のアドバイスが必要

 

やる気のない社員が1人でもいると、他の社員の業務に支障を及ぼします。顧客の信頼を失うこともあります。他の社員に、このような働き方でも許されると思われることも大きな問題です。

しかし、そうした場合であっても、やる気のない職員を解雇するという方法は、その後の紛争リスクを伴うため、最後の手段と考えるべきです。

まずは、社員に対して、会社の求める業務を明示して、業務を行わせ、そこから出てきた問題点について指導を行います。そこで改善がなければ、合意による退職を目指すことが適切です。安易な解雇は、労働者の納得感がないため、紛争への発展を招く可能性があり、かえって解決が遠のきます。まずは、この方向性をご理解いただくことが必要です。

そして、適切な指導の「継続」も重要です。弁護士のアドバイスを受けながら対応することで、指導方法を修正したり、自信を持って正しい指導を行うことができます。ときには、弁護士からの励ましも受けながら行うことで、適切な指導の継続が可能となるのです。そのため、弁護士のアドバイスを受けながら指導を継続することが重要です。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

咲くやこの花法律事務所の経験からすれば、問題のある職員についても、弁護士に対応をご相談いただき、正しい対応を続ければ、1~2か月程度で会社として納得できる解決ができることが多いです。

本件でも、指導チームが弁護士の助言を受けながら、日報等の記載欄を見直し、本格的にベテラン社員への指導を継続した結果、ベテラン社員の業務の改善ということには至らなかったものの、約2か月程度で退職届が提出され、問題を解決することができました。

 

6,解決結果におけるまとめ

 

本件では、ミスを繰り返したり、反抗的な態度を取ったりする社員への対応ではなく、「やる気がない」という、問題点を明らかにしにくい社員への対応をサポートさせていただきました。

「会社が求める業務」が不明確であったという会社側の問題点をご理解をいただき、診断書が出ても焦らずに、時間をかけて医療照会を行ったうえで指導方針を協議しました。弁護士の方針を信じていただき、入念な事前準備を経て、指導を開始し、それを継続することができました。その結果、ベテラン社員の業務の改善ということには至らなかったものの、退職という形で円満に問題を解決することができました。

社長に代わりベテラン社員の指導をすることとなった管理部の社員の方からは、「本当にありがとうございました。おかげさまで無事問題解決することができました。」とのお言葉をいただきました。揉めることなく、無事に円満解決をすることができて、本当に良かったです。

 

 

7,咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に関する弁護士への問い合わせ方法

数々の実績と豊富な知識のある弁護士がサポート!「labor-problemに強い弁護士」によるサポート内容について詳しくはこちら

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に関する弁護士への相談サービスへの問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

8,【関連情報】この事例に関連した解決実績

 

今回の解決事例は、「やる気のないベテラン社員の指導を弁護士がサポートして解決に至った事例」についてご紹介しました。他にも、今回の事例に関連した問題社員トラブルの解決実績を以下でご紹介しておきますので、参考にご覧ください。

 

正当な指導をパワハラであると反抗する問題社員に対してメールで指導し退職させるに至った事例

歯科医院で勤務態度が著しく不良な問題職員の指導をサポートした事例

成績・協調性に問題がある従業員を解雇したところ、従業員側弁護士から不当解雇の主張があったが、交渉により金銭支払いなしで退職による解決をした事例

遅刻を繰り返し、業務の指示に従わない問題社員を弁護士の退職勧奨により退職させた解決事例

業務に支障を生じさせるようになった従業員について、弁護士が介入して規律をただし、退職をしてもらった事例

 

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    著者:
    弁護士 西川 暢春
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    発売日:2025年1月20日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:240ページ
    価格:2,750円


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    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
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    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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