今回の解決事例で書かれている内容(目次)
本件は、3ヶ月の試用期間満了をもって解雇すると会社から従業員に通知したところ、従業員側弁護士から会社に解雇無効を主張する通知が届いたという事案です。
会社からの依頼により、弁護士が窓口となって本件解雇は有効であるとの主張を行い、従業員側弁護士との交渉にあたりました。
従業員側弁護士に対し、解雇の合理性、相当性を具体的に主張し、金銭を支払うことなく復職を断念させました。
法律上、解雇が有効とされるためには、「解雇の客観的・合理的な理由」と「解雇の相当性」が必要とされています。(労働契約法16条)
会社は、以下の解雇理由を主張しました。
一方、従業員側弁護士は、以下の反論をしてきました。
そこで、「従業員に成績不良や協調性欠如といった事情があったか」、「会社は適切に注意・指導を行ったか」が争点になりました。
弁護士が会社から聴き取り調査を行ったところ、従業員の業務能率が悪いという事情や、協調性がないという事情は多数存在しました。
例えば、従業員は仕事中の私語が多く、ほぼ毎日ミスを犯していました。 上司が指導しても反抗的な態度をとるため、会社主導で話合いの機会を設けていました。
それでも従業員の態度が改善されなかったため、配置転換を行いましたが、新しい配属先でも従業員の私語と毎日のミスは解消されませんでした。
しかし、従業員側弁護士も指摘するとおり、これらの事情について客観的な証拠がなかったため、裁判になった場合には苦戦する可能性がありました。
それでも、この従業員に勤務を継続させると会社全体の業務効率が悪化してしまうため、復職を認めるわけにはいきませんでした。
会社としては絶対に復職を認めないという姿勢を示し、従業員の行為や会社の指導などに関する詳細なエピソードを文書にまとめて、粘り強く主張を続けました。
本件では、解決金などを支払うことなく、従業員に復職を断念させることができました。
従業員を解雇したところ、従業員が組合に加入したり、労働者側弁護士に依頼したりして、不当解雇の主張をしてくるケースが年々増えています。
このような不当解雇トラブルについては、従業員の問題点や、会社が熱心に指導をしても改善されないという事情があっても、それについて客観的な証拠がないばかりに、会社が不利な立場に置かれることがよくあります。
また、仮に裁判で解雇無効と判断されると、給料を解雇時にさかのぼって支払うことになり、会社にとって金銭的な負担が大きくなります。
そのため、解雇を検討されている段階で、早めに労働問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
しかし、客観的な証拠がないからと言って従業員の言いなりになる必要はありません。
熱心に指導したのに解雇理由が解消されなかったという場合には、信念をもって解雇が有効であると主張すべきです。 解雇有効を根拠づける具体的なエピソードを拾い上げ、解雇は有効であるという強い姿勢で交渉に臨みましょう。
本件のように、裁判になる前に弁護士に交渉を依頼することで、迅速かつ有利な内容での解決が可能になります。
また、今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円