今回の解決事例で書かれている内容(目次)
依頼者の会社名や代表者名をヤフーで検索すると、会社名や代表者名の後に、詐欺的な商売をしていることを示唆する文字が自動的に表示されたので、弁護士が対応した事案です。
事件の詳細は、以下のとおりです。
ヤフーやグーグルなどの検索サイトの入力欄に、キーワードを入力すると、そのキーワードに続くキーワード候補が自動的に表示されます。この検索サイトの機能を「サジェスト機能」と言います。
サジェスト機能を利用することで、検索の際にキーワードを追加せずに、追加で入力したいキーワードを表示させることができます。
例えば、ヤフー検索で「オリンピック」と入力すると、「オリンピック」に続くキーワード候補とセットで、「オリンピック 平昌」「オリンピック メダル」「オリンピック 日程表」と表示されます(平成30年2月22日時点)
サジェスト機能については、対象となるキーワードと一緒に誹謗中傷ワードを大量に書き込むことで、人為的に表示されるキーワードを操作しようとすることもできます。これを「サジェスト汚染」と言います。
例えば、掲示板等に「株式会社甲乙商事 悪質」と大量に書き込みをし、「株式会社甲乙商事 悪質」での検索を大量に行います。そうすることで、検索エンジンが「株式会社甲乙商事 悪質」という情報について、多くの人が求めている情報と誤解して、「株式会社甲乙商事 悪質」というキーワードをサジェスト機能で自動表示してしまうことがあるのです。
本件の依頼者がヤフーで会社名と代表者名を入力したところ、会社名と代表者名に続く文字の候補として、詐欺的な商売をしていることを示唆する文字が自動的に表示されました。もちろん依頼者は、顧客に対して、詐欺的な商売をしていません。
この状態を放置しておくと、依頼者の名前をヤフーで検索した顧客が、依頼者が詐欺的な商売をしている会社だと勘違いしてしまう可能性があります。
そこで、ヤフー検索で、依頼者に続く文字の候補として誹謗中傷ワードが自動表示されないようにするため、咲くやこの花法律事務所に削除請求の依頼がありました。
弁護士名義でヤフーに対して内容証明郵便を送り、会社名と代表者名に続く文字の候補として、詐欺的な商売をしていることを示唆する文字を自動表示しないよう通知しました。その結果、ヤフー検索で、詐欺的な商売をしていることを示唆する文字が自動的に表示されることがなくなりました。
▶参考情報:誹謗中傷の削除については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
サジェスト機能で表示される誹謗中傷キーワードを削除するポイントは以下の3点です。
ここでは、本件に関する担当弁護士による見解をご説明します。
名誉棄損を理由にサジェスト機能で自動表示されるキーワードを削除するためには、サジェスト機能で表示される情報が真実でないことが必要です。
本件では、依頼者が詐欺的な商売をしている事実はなく、サジェスト機能で自動表示された内容は虚偽でした。さらに本件では、依頼者の名前をヤフー検索した結果、表示される上位10件のウェブページにも、依頼者が詐欺的な商売をしているという情報は一切記載されていませんでした。インターネット上で公表された情報を前提にしても、依頼者が詐欺的な商売をしていることを疑わせる事情はありません。
そうすると本件では、表示結果が人為的に操作された可能性もあります。そこで、弁護士からヤフー宛てに内容証明郵便を送り、この点を指摘しました。
▶参考情報:内容証明郵便の書き方や送り方については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
検索サイトを運営している会社との交渉では、検索エンジンのガイドラインに違反しているかどうかの検討も必要です。
ガイドライン上の基準は検索サイトを運営している会社自身が遵守すると表明しているのですから、ガイドラインに沿った措置を採るよう求めるのです。
ヤフーの場合は、「Yahoo!検索の品質向上に対する取り組み 2010年12月10日 19:00」で以下の通り記載されています。
「Yahoo! JAPANでは,これらのYahoo!検索の各表示結果を人為的に操作しようとする行為がインターネットユーザーの検索に対する満足度(Yahoo!検索の品質)を低下させるため,スパム行為として禁止しており,これらのスパム行為に対してはシステム的な措置を講じて排除するなど,よりよい検索結果の提供に向けて日々取り組んでいます。また,このようなサービス(企業)に許諾を与えることもしておりません。本機能を、SEOやいやがらせ等の目的で利用する行為は禁止しています。そのような行為を発見した場合には、なんらかの措置を実施することがあります。また、被害が発生した場合には、刑事・民事での法的責任を追求することがあります。」
このガイドラインによれば、ヤフーは、サジェスト機能の表示結果が人為的に操作された場合、スパム行為として排除すると表明している訳です。
そして上述のとおり、本件では表示結果が人為的に操作された可能性があります。そこで弁護士から内容証明郵便で、ヤフー自身のガイドラインに従い、ネガティブキーワードを削除するよう求めました。
本件では、グーグルの検索エンジンでは、会社名と代表者名に続く文字の候補として、誹謗中傷ワードが表示されることはありませんでした。
グーグルで表示されないということは、グーグルは、依頼者の名前の後に表示される誹謗中傷ワードをスパム行為として排除した可能性があるということが言えそうです。
そこで、内容証明郵便では、グーグルでは、依頼者に対する誹謗中傷ワードを排除する措置が取られていることも指摘して、ヤフーに対して誹謗中傷ワードの削除を求めました。
内容証明郵便を送付してから、約2週間で、ヤフーから誹謗中傷ワードの削除をしたという内容の回答がありました。その結果、依頼者の名前をヤフー検索しても、誹謗中傷ワードが自動表示されることはなくなりました。
本件のようにサジェスト機能で誹謗中傷ワードが表示された場合、いきなり裁判をするのではなく、まずは交渉での解決をめざすべきです。やり方次第では、交渉段階で任意に削除される可能性もあり、裁判をするより費用も安く短期間で解決するからです。
なお、本件では、サジェスト機能で自動表示される情報が真実でないことを裏付ける資料をヤフーに対して送付していません。本件のようにインターネット上で公表された情報を前提にしても、依頼者が詐欺的な商売をしていることを疑わせる事情がない場合、資料を送付しなくても、短期間で削除が認められるケースもあるのです。
最後に関連する論点として、仮に検索サイトで表示された情報が真実であった場合、一切削除が認められないのかという問題があります。
結論から申し上げますと、検索サイトで表示された情報が真実であっても、削除が認められる場合があります。この場合、名誉棄損ではなく、プライバシー侵害を理由に削除を求めることになります。
最高裁判所平成29年1月31日決定は、過去に有罪判決を受けたことが真実であっても、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索結果から削除することを求めることができると、判断しています。
例えば、罰金刑で逮捕されてから10年以上経過しているような場合は、前科についても検索結果からの削除が認められる可能性があるといえるでしょう。
咲くやこの花法律事務所の「誹謗中傷に強い弁護士への相談サービス」への今すぐのお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
今回の解説実績は、「ヤフー検索のサジェストで表示された中傷ワードを削除依頼して非表示にした成功事例」についてご紹介しました。
誹謗中傷関連のトラブルでは今回ご紹介してきた解決実績と合わせて、実際にトラブルが発生した時のために誹謗中傷に関するお役立ち情報も以下でまとめておきますので、合わせてご覧下さい。
・発信者情報開示請求とは?流れと必要期間、成功ポイントを弁護士が解説