今回の解決事例で書かれている内容(目次)
本件は、小売業の会社で従業員が横領した金銭「約660万円」について、弁護士が本人と身元保証人に支払いを請求した事例です。
被害額全額にあたる「約660万円」を回収することに成功しました。
本件では、従業員は横領の事実と金額を認めていました。そして、横領額「約1060万円」のうち、「約400万円」は弁償していましたが、残りについては「金がない」といって支払いを拒んでいました。そこで、本件では「金がない」といって支払いを拒む従業員からどのようにして被害額を回収するかが最大の問題となりました。
本件の経緯は以下の通りです。
経緯1:
本件は、依頼者である小売業者がダイレクトメール用に定期的に切手を購入していたことを悪用し、従業員が、切手を会社の経費で購入した後で換金し、その代金を横領していたケースです。
経緯2:
さらに、この従業員は実際には発生していないタクシー代や備品代も会社に請求しており、会社の被害額は合計で「約1060万円」に上っていました。
経緯3:
会社は横領被害に気付いた後、この従業員から「約400万円」を支払わせましたが、残り、「660万円」については、従業員が金がないことを理由に支払いませんでした。
経緯4:
そこで、会社は従業員の身元保証人であった従業員の母親にも支払いを求めましたが、やはり、金がないことを理由に支払いを拒まれました。
経緯5:
このような経緯から、弁護士が本件の横領金の返還交渉を担当することになりました。
横領した従業員が横領金の返還を拒む場合、裁判を起こして、従業員の個人口座を差し押さえたり、従業員の所有不動産を競売にかけることにより、回収が可能です。さらに、従業員が身元保証書を提出している場合は、裁判を起こせば、身元保証人の個人口座を差し押さえたり、身元保証人の所有不動産を競売にかけることによる回収も可能です。
ただし、裁判による回収は費用と時間がかかるため、まずは、裁判を経ずに回収することを目指しました。
そこで、弁護士から内容証明郵便で、従業員本人と身元保証人に支払いを督促し、支払いがなければ訴訟を提起する方針をとりました。内容証明郵便による支払いの督促では、期限を明確に区切って、期限内に支払いがなければ法的手段をとることを明記して行うことが重要です。弁護士の名義で内容証明郵便を出して、弁護士が法的手段をとることを予告することにより、請求を受ける側も、支払いを拒否すれば裁判になることを覚悟せざるを得ず、支払いを促すための心理的圧迫を加えることができます。
また、支払いがなければ直ちに裁判に移ることが可能です。
本件では、弁護士名義で内容証明郵便を出して支払いを督促し、さらに弁護士が窓口となって従業員本人や身元保証人と交渉を行いました。
▶参考情報:内容証明郵便の出し方については、以下のお役立ち記事をご紹介していますのであわせてご参照ください。
本件では交渉の結果、裁判を起こす前に、被害額の残り「約660万円」の全額を回収することに成功し、短期にスピード解決ができました。
本件のようなケースに備えて、金銭や貴重品を扱う従業員、備品の購入を担当する従業員については、身元保証書を取得しておくことが重要です。本件でも正しい身元保証書を作成していたことが回収に功を奏しました。「身元保証書の作成方法について」は、左記で詳しく解説していますので、ご参照ください。
また、本件は会社がダイレクトメール用に大量に切手を購入することを利用して、必要のない切手も購入したうえで換金していたという事件です。切手は、換金が可能であることから、本件のような横領の対象になりやすく注意が必要です。
横領事件防止のためには、料金後納郵便を利用するなどして、会社から切手をなくす努力をしていくことが効果的です。こちらでは「従業員の横領・不正防止のための注意点」についてご説明していますのであわせてご参照ください。
そして、実際に従業員に着服、横領された際には、早めに弁護士に相談することを強くオススメします。
▶参考情報:なお、業務上横領の会社の対応については、以下でさらにお役立ち記事をご紹介していますのであわせてご参照ください。
・業務上横領が起きたときの会社の対応は?発覚時の適切な対処が重要
・従業員に着服、横領された金銭の返済請求の重要ポイント【合意書 雛形付き】
・社内で業務上横領が起きたときの証拠の集め方!4つのケースを解説
・従業員による業務上横領や着服の刑事告訴・刑事告発のポイント
咲くやこの花法律事務所の業務上横領など労働問題に強い弁護士のサポート内容は「業務上横領に強い弁護士への相談について」のこちらのページもご覧下さい。
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