今回の解決事例で書かれている内容(目次)
「ECサイトの運営会社」の事例です。
本件は、一般消費者向けのECサイトを運営する会社が、何者かにクレジットカードを不正に利用される被害にあった事案です。自社による対応ではクレジットカード会社からその補償を得ることができなかったため、咲くやこの花法律事務所にご相談いただきました。
依頼者の会社は、SNS上で広告を出し、その広告費をSNSアカウントに登録したクレジットカードで支払っていました。しかし、ある日突然、広告を運用するSNSアカウントにログインできなくなり、依頼者とは全く関係のない広告が出稿されるようになりました。依頼者はSNSアカウントを乗っ取られたことに気づき、すぐにSNSの運営会社とクレジットカード会社に連絡して事情を説明しました。
しかし、SNSの運営会社からは今後の返金処理について、明確な回答は得られませんでした。また、クレジットカード会社からは、依頼者とは全く無関係の広告費用約110万円が引き落とされてしまいました。
このように、依頼者はカード会社に広告決済用のクレジットカードを不正利用されたことを通知していたものの、自社による対応ではカード会社からその補償を得ることができませんでした。そこで、咲くやこの花法律事務所にご相談いただきました。
咲くやこの花法律事務所で依頼を受け、弁護士がクレジットカード会社に内容証明郵便を送付して交渉しました。その結果、不正利用分についてクレジットカード会社に補償させ、引き落とされた広告費全額の返金を受けることができました。
本件で問題になったクレジットカード会社の約款によると、不正利用による利用料金の返金条件は、「カード情報の盗難等により他人に不正利用された」場合に約款に定められた期限までにカード会社に「通知」することでした。
しかし、本件では、依頼者が期限内にクレジットカード会社に広告決済用のクレジットカードを不正利用されたことを通知していたものの、補償を得ることができていませんでした。そこで、弁護士が依頼を受けて、カード会社に対して不正利用の事実を通知済みであることを改めて伝えて、カード会社に被害の補償を求めることにしました。
担当した弁護士の見解は、以下のとおりです。
クレジットカード会社との交渉では、約款の記載が重要です。また、約款は随時変更されますので、被害にあった時期に適用される約款を確認することが大切です。そこで、本件でも、弁護士は、まず、本件に適用されるクレジットカード会社の約款を確認しました。
クレジットカード会社の約款には、不正利用被害について、一定の条件のもとで補償に応じる内容が記載されていました。その内容は複雑なものでしたが、簡単にいうと、不正利用被害についての補償条件は、「カード情報の盗難等により他人に不正利用された」場合に約款に定められた期限までにカード会社に「通知」することでした。このように、クレジットカード会社との交渉では、約款に書いてある事項を確認し、きちんと整理することが大事です。
本件では「カード情報の盗難」があったことをどのようにクレジットカード会社に説明するかが問題になりました。依頼者はクレジットカードの不正利用に気が付いてからすぐに不正利用によって掲載されてしまった広告をスクリーンショットしていました。また、クレジットカード会社や広告を掲載していたSNSに利用明細を発行するように請求して、不正利用されたことを裏付ける資料を確保していました。
クレジットカードの不正利用では、正常利用による決済と不正利用による決済を正確に区別できるように証拠を整理することが重要です。正常利用と不正利用の区別ができないと、カード会社が不正利用された部分を特定できないからです。本件でも弁護士が利用明細を確認しながら、利用明細のうち正常利用によるものと不正利用によるものを1つ1つ区分けして整理しました。
本件のような事案では、相手に請求をするときは、弁護士名義で内容証明郵便で通知することが効果的であることが多いです。電話では、後日、言った言わないの議論になってしまう危険があり、また、お互いの説明の意図が正しく伝わらない可能性も高いからです。
特に、クレジットカード会社ではオペレーターが様々な電話対応をしている関係から、電話が非常につながりにくいことがあります。また、電話がつながったとしても担当者につながるまでたらい回しにされてしまい、こちらの言い分を伝えるために多くの労力を割くことになります。さらに、不正利用が複数ある場合、どの利用分が不正利用なのかを電話で正確に伝えることが難しいです。このように、クレジットカード会社との交渉において電話でやりとりを進めることは時間の浪費に繋がり、妥当ではなく、書面によって通知するべきです。
そこで、本件でも弁護士が、クレジットカード会社に対して不正利用された広告料金について引き落とされた額の返金を求める通知書を作成して、内容証明郵便で送りました。
▶参考情報:内容証明郵便の送り方については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
内容証明を通知してから数週間が経ってもクレジットカード会社から回答がありませんでした。そこで、弁護士から、クレジットカード会社に対して内容証明を送付した日付、内容、クレジットカード番号、依頼者のクレジットカード名義などを告げて直ちに対応するように何度も督促しました。また、カード会社の担当者に対して、弁護士が整理していた資料をメールで提示し、不足資料があれば対応するため指摘するように求めました。
これに対してカード会社担当者は、弁護士が整理した資料によって不正利用被害の事実を認め、不正利用被害分全額を返金対応することを表明しました。カード会社との協議により、返金方法は振り込みではなく、依頼者の正当なクレジットカードの利用額と相殺処理する方法で返金されることになりました。結果として、内容証明郵便による通知から1ヶ月程度でカード会社は引き落とし額の返金義務があることを認め、さらに1ヶ月後には実際に返金が実現しました。
本件では、依頼者が自社でカード会社と交渉していた時点では、不正利用された内容がカード会社担当者に正確に伝わっておらず、また不正利用を示す資料も正しく提示されていませんでした。その結果、依頼者としては不正利用により受けた損害について補償を得ることができないままなっていました。
クレジットカードを不正利用された場合、不正利用された時期、不正利用された項目、不正利用された額を1つずつ正確に整理した上で、クレジットカード会社に送付する必要があります。普段から法律や約款を読んでいない方からすると、約款の記載内容を確認することや不正利用を裏付けるために必要となる資料を整理することが難しい場合もあります。特に法人におけるカード不正利用は被害額も大きく、交渉には専門的な対応が求められます。
クレジットカードを不正利用された場合に、自社での返金交渉が難しいときは、できるだけ早く弁護士に依頼して約款を確認したうえで必要資料を準備し、内容証明郵便を送付することが返金対応の可能性を高めます。咲くやこの花法律事務所でも企業のカード不正利用被害回復についてご相談をお受けしています。法人カードの不正利用被害の補償について、カード会社の対応に不安があるときは、できるだけ早くご相談ください。
▶参考情報:なお、今回の事案のように債権回収を弁護士に相談すべき理由やメリットについて、以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。
咲くやこの花法律事務所の債権回収に関する弁護士への相談サービスへの問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
今回の解決事例は、「SNSアカウントのっとりによる法人カードの不正利用被害についてカード会社との交渉により全額補償させた事案」についてご紹介しました。他にも、今回の事例に関連した債権回収トラブルの解決実績を以下でご紹介しておきますので、参考にご覧ください。
・契約上の返金義務を履行しない相手方に対し法的手段をとり、全額返金させた事例
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