契約上の返金義務を履行しない相手方に対し法的手段をとり、全額返金させた事例
債権回収の解決実績

契約上の返金義務を履行しない相手方に対し法的手段をとり、全額返金させた事例

契約上の返金義務を履行しない相手方に対して、法的手段をとり、全額返金させた事例

この成功事例を紹介する弁護士

  • 弁護士  池内 康裕
  • 咲くやこの花法律事務所  弁護士  池内 康裕

    出身地:兵庫県姫路市。出身大学:大阪府立大学総合科学部。主な取扱い分野は、「労務・労働事件(会社側)、保険業法関連、廃棄物処理法関連、契約書作成・レビュー、新商品の開発・新規ビジネスの立ち上げに関する法的助言、許認可手続における行政対応、顧問弁護士業務など」です。
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1,事件の概要

 

本件は、支払督促手続を利用して人材紹介の前払報酬金の取戻し(返金)に成功した事例です。

 

▶参考情報:支払督促手続とは、以下の記事を参考にご覧ください。

 

支払督促とは?債権回収の場面での利用のメリットとデメリットを解説

 

詳細な経緯は以下の通りです。

 

(1)依頼者は、人材紹介の前払報酬金として、東京の職業紹介事業者に報酬金を前払いして支払いました。

 

(2)依頼者と職業紹介事業者との契約では、依頼者が紹介された人材について内定を出さなかった場合、前払報酬金を契約満了月翌月末に全額返金すると記載されていました。

 

(3)依頼者は、内定を出さなかったため、職業紹介事業者に、契約満了期間が満了する前に、前払報酬金の返金を求めましたが、契約期間がまだ終わっていないことを理由に返金を断られました。そして、職業紹介事業者は、依頼者に対して、契約期間が終わった後、返金すると依頼者に説明しました。この職業紹介事業者の対応は、契約どおりの対応でした。

 

(4)そこで、依頼者は、契約期間が終わるのを待って、契約期間が終わった月の翌月に、再度職業紹介事業者に契約上返金を求めることができる前払報酬金約300万円の返金を求めました。ところが、職業紹介事業者は、依頼者の従業員の言葉遣いが悪いと主張して、返金に応じませんでした。

 

(5)依頼者は、計3回、返金を求めましたが、結局、職業紹介事業者は返金に応じません。職業紹介事業者が返金に応じない理由もはっきりしませんでした。

 

そこで、依頼者は、自分で督促しても、らちがあかないと考え、弁護士法人咲くやこの花法律事務所に相談されました。

 

2,問題の解決結果

 

弁護士名義の内容証明郵便を送付し、それでも支払わないので、支払督促の申立を行った結果、訴訟に移行しましたが、職業紹介事業者から前払報酬金全額が返金されました。

 

3,問題の解決における争点(弁護士が取り組んだ対応)

 

本件で弁護士が取り組んだ対応内容について、時系列順に解説いたします。

 

(1)内容証明郵便の送付

 

弁護士名義の内容証明を送付しました。記載内容は、以下の通りです。

 

  • ・契約上、前払報酬金全額を返金する義務があること
  • ・10日以内に返金されない場合、法的手段が執ること
  • ・法的手段を執る場合、遅延損害金の支払いを求めること

 

▶参考情報:内容証明郵便の書き方、出し方については以下の記事もご参照ください。

 

内容証明郵便の書き方、出し方、効力について弁護士が解説!

 

(2)弁護士との交渉

 

内容証明郵便を送付したところ、職業紹介事業者側にも代理人弁護士が就きました。

代理人弁護士と話をしたところ、前払報酬金約300万円の返金義務自体は認めるということでした。しかし、いくら支払うように交渉しても、一向に支払われる様子はありません。

 

(3)支払督促の申立

 

交渉で、話し合いを続けても解決の見込みが立たないので、法的な手段を執ることを検討しました。

直ちに訴訟提起をするという方法も考えられましたが、契約で裁判を管轄する裁判所が相手方の本店所在地に決まっていること、支払義務自体に争いがないことから支払督促の申立をしました。

支払督促は、支払義務について金銭の額や支払時期、申立人と相手方に相違がない場合に向く手続です。

支払督促申立書には以下の内容を記載しました。

 

  • ・契約上、前払報酬金全額を返金する義務があること
  • ・職業紹介事業者側も支払義務を認めているにもかかわらず、支払わないこと
  • ・支払が遅れているので、民法で決まった1年間で3パーセントの遅延損害金を支払う義務があること

 

支払督促は、訴訟と比較して以下のメリットがあります。

 

  • ・書類審査のみなので,訴訟の場合のように審理のために裁判所に来る必要がない
  • ・裁判所に納付する手数料は,訴訟の場合の半額

 

▶参考情報:支払督促のメリットとデメリットについては以下の記事もご参照ください。

 

支払督促とは?債権回収の場面での利用のメリットとデメリットを解説

 

支払督促の申立をしたところ、職業紹介事業者から連絡があり、1ヶ月後に支払うので取り下げて欲しい旨の申出がありました。ここで取り下げても、支払われることが確実ではないので、この段階で取り下げることはありません。

その後、職業紹介事業者側から支払督促に異議が出されました。支払督促の申立をした場合、相手方が支払督促に対し異議を申し立てると、地方裁判所又は簡易裁判所の民事訴訟の手続に移行します。

 

(4)通常の訴訟に移行

 

支払督促に異議が出されたので、訴訟に移行しましたが、基本的には支払督促申立と同様の事実を主張します。

そうすると、職業紹介事業者側の代理人から、請求した前払報酬金全額を返金するという連絡がありました。初回の裁判の前に、請求した前払報酬金全額と遅延損害金が支払われましたので、訴えを取り下げました。

 

4,担当弁護士の見解

 

以下では、担当弁護士の見解について解説していきます。

 

(1)支払義務自体に争いがなければ支払督促・訴訟提起も有力な選択肢

 

本件のように、相手方と話し合いをしても、法的な争点がなく、支払を待って欲しいといわれることがあります。しかし、支払を待って欲しいと言われて、待っていても払ってもらえる可能性は、低いです。

多くの場合、支払を待って欲しい理由は、経済的に支払う余裕がないことだからです。全くお金がないのであれば、支払督促や訴訟で回収することはできません。

ただし、債務者に全くお金がないかどうかは、債権者には分からないことが多いです。また支払う余裕がないといっても、全くお金がないケースは珍しいといえます。

特に債務者が事業者の場合、他に優先的に支払わなければならない取引先があるので、後回しにされているケースが多いです。特に本件での支払額は、約300万円です。300万円という金額は、多くの事業者にとって支払うことがおよそ不可能な金額ではありません。

そうするとできる限り、相手方の支払先としての優先順位を高くするという方針になります。

このような場合、弁護士名義の内容証明郵便で督促することも効果的ですが、それでも払わない場合、仮差押え、支払督促、訴訟等の法的手段の検討も選択肢に入れるべきです。

このような法的手段をとった債権者とそうでない債権者を比較すると、法的手段をとった債権者に優先して支払われるからです。本件でも、交渉段階ではらちがあきませんでしたが、最終的に支払督促を申し立てたことで支払に応じました。

 

(2)繰り返し段階的に請求する

 

債権回収は段階的に請求することが肝要です。

以下の1から5の順番で、手間や労力がかかります。

 

  • 1.会社の担当者が口頭で督促する
  • 2.会社が書面で督促する
  • 3.弁護士に依頼して、内容証明郵便等で督促する
  • 4.支払督促(裁判所を通して書面を送付して、相手方が異議を述べなければ、強制執行することができる。)
  • 5.訴訟(世間一般で言われる裁判のこと。当事者同士で何度も主張をぶつけ合って判決をもらう。時間的には、3か月~1年くらい。)

 

全ての未回収債権について訴訟をする必要はありません。債権の額、事件の難易度、回収の可能性、税務上の損金処理の必要性を考慮して、どこまでの手続を進めるのかを検討する必要があります。損金処理については、税理士の見解を確認する必要があります。

訴訟を提起する場合も、常に判決まで行くとは限りません。裁判の過程で和解することもありますし、今回のように初回の裁判までに、お金が支払われ、解決することもあるのです。

 

(3)契約書は重要

 

本件では、契約書があり、相手が契約書によれば前払報酬の返金義務を争うことは不可能な事案でした。

契約書があるかどうかと契約が成立しているかどうかは本来であれば、別の問題です。しかし、契約書がないと、「契約書がないから払わなくていい」というような間違った反論がされることがあります。さらに契約書がないと、口約束なので「言った」「言わない」のトラブルに発展する可能性があります。

このように契約書とは、トラブルを回避するために重要です。

契約書があっても、その内容が曖昧だと、契約書の解釈をめぐって争いが生じ、話し合いで解決しない可能性があります。

 

5,解決結果におけるまとめ

 

本件では、弁護士名義の内容証明郵便を送付し、それでも支払わないので、支払督促の申立を行い、職業紹介事業者から前払報酬金全額が返金されました。

債権回収では、法的手段を執るかどうかの決断が重要です。今回のケースでは、支払義務に争いがなく、金額的にも相手方にとって支払うことが可能な金額であることに着目して、支払督促、裁判を進めました。

本件では、はっきりと相手方は支払いを拒絶していませんでした。支払拒絶しないことと実際に支払ってくれることとは別問題です。将来的に支払われるということを確実にするためにはそれなりの根拠が必要です。それなりの根拠が示されない場合、弁護士を代理人にたてることで、交渉、支払督促、訴訟することも必要になる場面があります。

また、債権回収については、適切な手段を選択することで回収率が変わってきます。

債権回収に関連するお役立ち情報については、以下の5つの記事でも詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

債権回収でお困りの場合は専門家である弁護士までご相談ください。咲くやこの花法律事務所の債権回収の代行に強い弁護士への相談は以下をご参照ください。

 

 

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7,【関連情報】この事例に関連した解決実績&お役立ち情報

今回は、「契約上の返金義務を履行しない相手方に対し法的手段をとり全額返金させた事例」について、ご紹介しました。

他にも、今回の債権回収に関連した解決実績を以下でご紹介しておきますので、参考にご覧ください。

 

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