債権回収の解決実績

労働組合の副委員長から依頼をうけて、労働組合費を不正使用した委員長に対して証拠を集めたうえで面談を行って不正使用を認めさせた事例

労働組合の副委員長から依頼をうけて、労働組合費を不正使用した委員長に対して証拠を集めたうえで面談を行って

この解決実績を紹介する弁護士

  • 弁護士  木曽 綾汰
  • 咲くやこの花法律事務所  弁護士  木曽 綾汰

    出身地:広島県福山市。出身大学:大阪大学法学部法学科。主な取扱い分野は、「労務・労働事件(企業側)、債権回収、消費者クレーム・取引トラブルの解決、IT関連トラブル、契約書のリーガルチェック、警備業法関連、顧問弁護士業務など」です。
    弁護士のプロフィール紹介はこちら

1,業種の紹介

 

「労働組合」の事例です。

 

2,事件の概要

 

本件は、労働組合の委員長が、私的な物品の購入などに使用した費用を、不正に労働組合の経費として請求し、労働組合費を不正使用していた事案です。

労働組合の経理担当者が、請求された経費の整理をしていたところ、数年間にわたって経費を不正使用していた疑いがあることが発覚しました。

相談者は、組合費を不正使用されている疑いがあり、悔しい気持ちとなんとか解決したい気持ちはあるものの、どのように証拠を集め、本人に認めさせることができるのか、その進め方がわかりませんでした。そのため、労働組合の副委員長から、調査と面談の立会いを弁護士に依頼したいとして、咲くやこの花法律事務所にご相談いただきました。

 

3,問題の解決結果

 

弁護士が、組合費の不正使用に関して調査を行い、不正使用を行った証拠を集めたうえで、委員長に対して面談を行いました。面談において、不正使用を行った証拠を突き付けることで、委員長は不正使用を認め、不正使用したお金を返還することを約束させることができました。

 

4,問題解決におけるポイント

 

本件のポイントは、以下の3点でした。

 

  • ●(1)不正使用の調査方法
  • ●(2)面談において相手に言い訳を許さないための進め方
  • ●(3)不正使用したお金の確実な返済を実現する方法

 

以下で詳しく解説します

 

(1)不正使用の調査方法

本件では、委員長(相手)がディスカウントショップやコンビニで購入した商品の代金を労働組合の経費として請求していました。

しかし、この事実のみをもって直ちに組合費を私的に使用していると断定し、不正使用を追及することは困難な状況でした。というのも、労働組合では定期的に大会が開催されており、その際に景品としてお菓子などを購入する必要があります。そのため、単に「ディスカウントショップやコンビニで購入しているから組合費を不正使用したのではないか」と追及したとしても、「大会用にお菓子を購入しただけで、正当な支出だ」と反論される余地があったからです。

そこで、相手に反論の余地を与えず、客観的に不正な経費の支出であることを示すために、どのように調査を進めていくかを検討する必要がありました。

 

(2)面談において相手に言い訳を許さないための進め方

私的に使用した費用について、経費であると嘘をつき不正にお金を得る行為は、刑法上の詐欺罪に該当する可能性があり、刑事責任が問われるおそれもあります。また、不正使用した金額は、当然ながら返済する必要があるため、その金額が多額であればあるほど、相手にとって返済の負担は重くなります。

そのため、面談において不正使用を追及したとしても、相手はなんとか言い逃れをしようと試みて、簡単には不正使用を認めないことが考えられます。

そこで、相手に言い訳を許さずに不正使用を認めさせるために、どのように面談を進めていくかを事前に考えておくことが重要となります。

 

(3)不正使用したお金の確実な返済を実現する方法

面談を行ったことで相手が不正使用を認めたとしても、後になって「その場の雰囲気で無理やり認めさせられただけだ」と言って言い逃れをする可能性があります。また、不正使用を認めたはいいものの、不正使用した金額の返済は一切行わない、という事態となるおそれもあります。

このような事態を防ぐためにも、不正使用を認めたことや返済の義務があることをどのように証拠化するかの検討が必要でした。

 

5.担当弁護士の見解

 

担当した弁護士の見解は、以下のとおりです。

 

(1)弁護士会照会を利用した証拠の収集

相手に反論の余地を与えず、客観的に不正な経費の支出であることを示すためには、相手が労働組合の活動とは無関係な商品を購入していることを示す必要がありました。

しかし、相手が経費を請求するために労働組合に提出していたのは、商品を購入した店舗が発行した領収書だけでした。領収書には、購入した商品の合計金額のみが記載されており、それだけでは具体的に何を購入したかまではわかりません。

そこで、弁護士会照会という制度を使い、領収書を発行したディスカウントショップに対して、購入商品の内訳を開示するように求める方法で調査を行うことにしました。

弁護士会照会とは、弁護士法第23条の2に基づいて、弁護士会が企業などの団体に対して必要事項を調査する制度のことで、弁護士のみが利用することができる制度です。

この制度を利用して調査を進めることで、効果的な証拠を収集することが期待できます。

ディスカウントショップに対して内訳を開示するよう求めるにあたっては、なぜ商品内訳の開示が必要なのか、その理由や目的を具体的に説明し、できる限り開示に応じてもらえるように工夫をしました。

また、調査を進めていることが相手に知られてしまうと、証拠の隠滅や言い訳の準備をされるおそれがあります。そのため、照会先には、不正使用の調査であるため、弁護士会照会がされたことを相手に伝えないよう配慮を求め、相手に調査中であることを知られないよう工夫しました。

このような弁護士会照会の結果、ディスカウントショップから購入商品の内訳を開示してもらうことに成功しました。開示された商品は、マスク、化粧品、インスタント食品、香水、お酒などいずれも日用品であり、労働組合の活動とは無関係であることが明らかなものでした。

さらに、相手による「大会の景品として購入した」という言い訳を封じるため、各購入日の前後に大会が開催されていたかどうかも調査しました。その結果、いずれの購入日についても、近い日に大会が行われていなかったことが判明しました。

このようにして、①労働組合の活動とは無関係な商品を購入していたこと、②大会の景品として商品を購入していたわけではなかったこと、を示す確実な証拠を集めることができました。

依頼者は、当初、不正使用の証拠をどのように集めればよいか不安に感じられていました。しかし、弁護士会照会を活用した調査によって決定的な証拠が得られたことで、これで相手に証拠を突き付けることができると安心していただくことができました。

 

(2)最初に証拠を見せずに、矛盾を引き出す

調査によって証拠を収集することができたとしても、面談の際に何の考えもなしに証拠を提示してしまうと、相手に言い訳の余地を残してしまい、適切ではありません。最初に証拠を提示しながら追及を行った場合、相手は、提示された証拠に矛盾しないように弁解をすることができてしまうからです。

そのため、相手に言い訳を許さずに不正使用を認めさせるためには、まずは証拠を提示せずに質問をしていくことが望ましいです。そして、相手が証拠と矛盾する言い訳をした場合には、その言い訳と矛盾する証拠を突き付けることで、それ以上の弁解を封じることが期待できるのです。

本件でも、弁護士が面談に立ち会ったうえで、まずは相手に証拠を提示せず、「経費を何に使ったのか」「ディスカウントショップで何を購入したのか」を確認しました。

すると、相手は、「経費は労働組合の活動のために使った」「ディスカウントショップでは組合の大会で使う景品を購入した」と、動揺した様子を見せながら言い訳をしてきました。

これは事前に収集した証拠の内容とは明らかに矛盾する言い訳でした。そこで、この時点で初めて証拠を提示し、改めて何を購入したのかを確認すると、「私生活で使用する物を購入した」と認めさせることに成功しました。

一度不正使用したことを認めた後は、その他の不正使用についても言い訳をしながらも認めさせることができました。

相手は、不正使用がばれたことで今後どうなるのか不安に思っていたのか、時折えずく様子も見せていました。一方、相談者は、無事相手に不正使用を認めさせることができ、安心した様子でした。

 

(3)自認書や返済誓約書を作成する

相手が面談の後に言い逃れをし始めたり、不正使用した金額の返済を行わなかったりといった事態を防ぐためには、不正使用を認める旨を記載した自認書に署名させ、返済を誓約させる返済誓約書に署名させることが重要です。

署名させるタイミングも重要で、面談を行った後に自認書や返済誓約書を作成し、後日署名させようと思っても相手から署名を拒否される可能性が高まってしまいます。

そのため、本件では、面談を行う前に、あらかじめ自認書と返済誓約書のひな型を作成しておき、相手が不正使用を認めた際に、すぐ署名してもらえるように準備しておきました。事前に準備しておくことで、最初は言い訳をして不正使用を認めなかった相手でしたが、スムーズに自認書や返済誓約書に署名してもらうことができました。

 

6,解決結果におけるまとめ

 

本件では、弁護士会照会という弁護士のみが利用できる制度を利用して、決定的な証拠を収集することができ、面談でも相手に不正使用を認めさせることができました。

経費の不正使用や横領の事案では、相手と面談するまでの間に、いかに早く決定的な証拠を収集できるかが重要となってきます。

労働組合では、組合費の横領や組合費の私的な使用といった不正が起きることがあり、咲くやこの花法律事務所にご相談いただく例もあります。このようなケースでは、不正が疑われる本人から事情を聴く前に十分に証拠を収集しておくことで、言い逃れをさせず、経費の不正使用や横領を本人に認めさせることが重要です。

この事例でご紹介したような弁護士会照会を利用した証拠の収集はその一例です。咲くやこの花法律事務所でも、組合費の横領や組合費の私的な使用について、証拠の収集や面談の実施のご相談を承っていますので、ご相談ください。

 

▶参考情報:なお、今回の事案のような経費の不正使用の対応について、以下でお役立ち記事も紹介していますのであわせてご参照ください。

経費の横領や不正とは?典型的な手口と発生時の対処法や防止策を解説

業務上横領の証拠がない場合はどうする?対応方法について詳しく解説

着服、横領された金銭の返済請求の重要ポイント【合意書 雛形付き】

 

7,咲くやこの花法律事務所の経費の不正利用や横領に関する弁護士への問い合わせ方法

数々の実績と豊富な知識のある弁護士がサポート!「debt-recoveryに強い弁護士」によるサポート内容について詳しくはこちら

 

咲くやこの花法律事務所の業務上横領被害に関する弁護士への相談サービスへの問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

8,【関連情報】この事例に関連した解決実績

 

今回の解決事例は、「労働組合の副委員長から依頼をうけて、労働組合費を不正使用した委員長に対して証拠を集めたうえで面談を行って不正使用を認めさせた事例」についてご紹介しました。他にも、今回の事例に関連した経費の不正使用や業務上横領トラブルの解決実績を以下でご紹介しておきますので、参考にご覧ください。

 

弁護士会照会を活用した調査をもとに6000万円超の横領を自白させ、支払いを誓約させた事例

弁護士がレジ金横領の証拠を確保し被害全額の回収に成功した事例

横領した従業員に損害賠償を求め、給料の差押えにより回収した成功事例

横領の疑いがある従業員に対して、弁護士が調査を行って横領行為を認めさせ、退職させた解決事例

 

  • ツイート
  • シェア
  • はてブ
  • LINEで送る
  • Pocket
  • 同じカテゴリの解決実績を見る

    業法務に特に強い弁護士が揃う 顧問弁護士サービス

    企業法務の取扱い分野一覧

    企業法務に強い弁護士紹介

    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
    片山 琢也 弁護士
    片山 琢也(かたやま たくや)
    大阪弁護士会/京都大学法学部
    堀野 健一 弁護士
    堀野 健一(ほりの けんいち)
    大阪弁護士会/大阪大学
    所属弁護士のご紹介

    書籍出版情報


    訴訟リスクを回避する3大労使トラブル円満解決の実践的手法―ハラスメント・復職トラブル・残業代請求

    著者:
    弁護士 西川 暢春
    弁護士 井田 瑞輝
    弁護士 木澤 愛子
    発売日:2025年1月20日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:240ページ
    価格:2,750円


    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


    書籍出版情報一覧へ

    運営サイト

    大阪をはじめ全国の中小企業に選ばれ続けている顧問弁護士サービス
    業務上横領の法律相談サービスサイト
    弁護士西川暢春の咲くや企業法務TV

    弁護士会サイト

    大阪弁護士会
    日本弁護士連合会
    企業法務のお役立ち情報 咲くや企業法務.NET遠方の方のご相談方法