今回の解決事例で書かれている内容(目次)
「製造業」の事例です。
本件は、倉庫を借りていた相談者の賃貸借契約の終了による保証金の返還請求について、咲くやこの花法律事務所が依頼を受け、訴訟、強制執行と裁判手続を進めることで、最終的に全額を回収したケースです。
相談に来られたA社は、B社から倉庫を借り、賃料の3ヶ月分の保証金を差し入れていました。
賃貸借契約書によると、賃貸借契約の終了後、A社が倉庫を明け渡せば、B社は速やかに保証金を返還することになっていました。
A社は賃貸借契約の契約期間満了時にB社に解約を申し入れ、契約終了時までに倉庫を明け渡しました。ところが、A社の明渡完了後も、B社は保証金を指定の口座に振り込みませんでした。
A社が、B社に保証金の返還を求めても、担当者は「わかっています、返します」と繰り返すのみで、一向に支払う様子がありません。
明渡しから3ヶ月近くが経っても、B社は、具体的な理由を説明することもなく、保証金を返還しませんでした。
「電話、メールでやり取りをしていても、のらりくらりと逃げるだけで、話が全く進みません」とのことで、A社の担当者が咲くやこの花法律事務所に相談にお越しになりました。
本件では、最終的に裁判と差押えという法的手段によって保証金全額の回収に成功しました。
その経緯は以下の通りです。
咲くやこの花法律事務所で保証金の返還請求のご依頼を受けた後、弁護士がA社の代理人として、B社に保証金の返還を求める内容証明郵便による通知書を送付しました。
しかし、B社からの支払いや連絡がなかったため、弁護士がA社の代理人として、いつ保証金を支払うのかを確認するために、B社に電話しました。
B社の社長は電話口に出て、「わかっています、返しますから」と答えるものの、いつまでに支払うかは明言しませんでした。
数日おいて、再度、弁護士がB社に電話をしても、不在を理由にB社の社長は電話に出ることはなく、折返しの連絡もありませんでした。
やむを得ず、弁護士がA社の代理人として、B社に保証金の返還を求める訴訟を提起しました。
B社は裁判所に出頭することなく、A社の請求全額を認める判決が出ました。
判決確定後、支払いを求めるために、あらためて弁護士がB社に電話をしましたが、それでも不在を理由にB社の社長とは直接話をすることができませんでした。
<h3>(3)相手の銀行預金を差し押さえた</h3>
そこで、やむを得ず、弁護士がA社の代理人として、B社の銀行預金の差押えを裁判所に申し立てました。
裁判所からの差押命令申立書が銀行に届いた日に、B社から弁護士宛に「今日中に全額を振り込むので、差押えをすぐに取り下げてください」との電話がありました。
その後、その日のうちに、こちらの請求額の全額が振り込まれました。
このようにして最終的に、保証金、遅延損害金、執行費用(差押えに要する裁判所の手数料)の回収に成功しました。
一般に、賃貸借契約終了時に、賃貸人が「保証金から原状回復費用を控除して返金する」等の主張をすることがあります。
しかし、A社は既に倉庫内の物品を全て撤去し、別の会社が倉庫の使用を開始していましたので、原状回復費用が発生するということはありませんでした。
弁護士は、A社の担当者から解約に至る経緯を聴き取り、賃貸借契約書の条項を精査しましたが、B社が保証金の返還を拒み得る根拠は何一つ見つかりませんでした。
このような場合に回収にあたり重要な問題になるのは、債務者の支払い能力です。
そこで、今回は、「支払い能力に問題があると考えられるB社からどのようにして回収を実現するか」が問題になりました。
以下では、担当弁護士の見解について詳しく解説していきます。
裁判所を使った債権回収には、訴訟以外にも、「支払督促」などの簡易な手続もあります。
しかし、本件では訴訟を選択することにしました。
訴訟は、請求を根拠付ける証拠の提出が必要であり、交互に主張・反論の書面を提出しなければならないので、判決が出るまでに一定の期間を要します。
つまり、一般的には、訴訟は手間と時間がかかるというデメリットがあります。
しかし、本件では、契約書上、B社が保証金の返還を拒否できる法的な根拠が見当たりませんでした。そのため、B社が法的な反論をしてくる可能性は低く、判決が出るまでにそれほど時間はかからないと判断しました。
案の定、B社は一切反論することなく、訴訟の第1回期日にも出廷せずに、第1回期日で当方の請求を全て認める内容の判決が出ました。
判決が出ても相手方が支払に応じなければ、裁判所に「強制執行(差押え)」の申立てをして、債権を回収しなければなりません。
しかし、裁判所は債務者の財産がどこにあるかの調査までは手伝ってくれませんので、弁護士が想像力を駆使して、差し押さえるべき財産を探す必要があります。
最も差押えがしやすいのが、預金債権です。
ただし、預金債権の場合、債務者が口座を持っている銀行と支店を特定する必要があります。
本件では、訴訟提起前の段階から、B社のWebサイトに取引先銀行が記載されていることを確認していました。そのため、B社がその銀行に対して有している預金債権を差押えの対象として、裁判所に債権差押命令申立書を提出しました。
このように預金の差押えを行いましたが、当然ながら、銀行に預金残高がなければ、差押えは失敗し、「空振り」に終わります。
弁護士が裁判所に債権差押命令申立書を提出した段階では、銀行にいくらの残高があるかはわかりません。
そのため、差押えが「空振り」に終わらないか、心配しながら銀行からの回答を待っていました。
裁判所に債権差押命令申立書を提出してから、3,4日後、銀行からの回答より先に、B社の社長から弁護士宛に電話がありました。
用件は、「言われた金額をすぐに支払うから、すぐに銀行への差押えを取り下げてほしい」というものでした。
請求金額さえ支払われれば、差押えを維持しておく必要もありません。そのため、B社に対して支払金額と振込先口座を明記してFAXで送信しました。
このときに、これまで、A社として、訴訟、強制執行と手続を重ねてきましたので、保証金元金に対する年6%の遅延損害金と執行手続のために裁判所に支払った費用も合わせて請求しました。
その後、B社からすぐに支払があり、全額回収することが得きました。
裁判所に取下書を提出しました。
恐らく、銀行がB社に対し、裁判所から債権差押命令申立書が届いたと連絡を入れたのだと思われます。
債務者が差押えを受けた場合、銀行は貸付金の一括返済を求めることができる契約になっていることが多いので、B社は慌てて、支払いを申し出て差押えの取下げを求めてきたものと思われます。
なお、預金口座の差押えについては以下の記事で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
本件では、最終的に、A社は請求金額全額、遅延損害金、執行費用を回収することに成功しました。
債権回収する場合、債権があることは当然に認められるとしても、どのような進め方をするのがベストかを慎重に吟味する必要があります。
弁護士から債務者に通知を送った段階で、債務者が警戒して財産を隠してしまうこともあります。
裁判外の交渉をするのか、裁判手続を使うのか、裁判手続を使うとして、民事調停、民事保全、支払督促、訴訟などのどれを使うのか、訴訟を経て判決を得たとして、そこからどのように債権を回収するのか、債務者と接触する前の段階で、回収の可能性を見据えて、債務者にどのようにアプローチするか、などについて十分に検討を重ねておく必要があります。
債権回収にお困りの場合は、咲くやこの花法律事務所まで早めにご相談ください。
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