今回の解決事例で書かれている内容(目次)
「内装工事業」の事例です。
本件の相談者は内装工事業者です。
本件は、賃貸マンションの内装工事費用が期限になっても支払われず、発注者である家主に請求してもまったく連絡がつかず、回収ができなくなっていた事案です。
相談者はこの家主とは数年前から取引をしていましたが、取引開始後1年程たってから急に支払いがされなくなりました。事情を確認しようと家主に連絡しても回答はなく、支払いが受けられないまま1年程経過してしまいました。
とりあえず、未払い分の支払いがされるまでは新たな発注を受けないようにし、相談者自身で書面を送る、家主の自宅を訪問する等して何とか連絡を取ろうとしました。しかし、書面への回答はなく、自宅も呼び鈴をならしてもまったく応答がない状況で、一切連絡がとれませんでした。
そこで、この内装工事費の回収について咲くやこの花法律事務所にご相談にお越しになり、工事費回収をご依頼いただきました。
最終的に裁判を起こして工事費の支払いを求めた結果、相手である家主がようやく応答し、未払い額全額を支払う内容で和解が成立しました。
その後、分割ではありましたが無事に全額が支払われました。
以下では、問題解決において弁護士が取り組んだ課題について詳しく解説していきます。
相手については、病気やケガ等ではなく、通常通り生活をしていることはわかっていました。しかし、相談者が連絡してもまったく応答がなく、何らかの理由で意図的に無視されている状況でした。
このことから、交渉のために連絡しても対応されず、裁判まで必要になる可能性が高い事案といえました。
しかし、裁判を起こすうえで、契約書などの証拠書類がないことが問題になりました。
本件では、大きな工事が基本的になく、1回あたり数万円程度の小さな工事が頻繁に発生する取引であったことから、その都度契約書をかわすことをしていませんでした。
また、正式に見積りや発注書・請書等を発行せずに、メールや口頭で依頼を受けて工事を実施するというやり方となっていました。そのため、1つ1つの請負工事契約が成立したことを示す明確な資料がない状況でした。
裁判となると証明が求められるため、この点が問題となることが予想されました。
連絡が取れなかった債務者が最終的に裁判まで起こされて、ようやく無視できないと悟り、支払いに応じる姿勢を示すことは珍しくありません。
そのため、時間や費用がかかりますが裁判は債権回収において重要な手段です。
しかし、連絡がとれない相手に裁判をする場合、裁判所から相手に送られる、訴状などの裁判資料を相手が受け取らない可能性があります。そして、裁判資料が相手に届かなければ、原則として裁判手続きを進めることができません。
裁判資料などを相手に届けることを法律用語で「送達」と言います。
本件では、相手が普通に生活していることはわかっていたものの、こちらから書面を送付しても一切受け取らない状況でした。そのため、通常の送達手続では相手が資料を受け取らず、送達ができない可能性が高いことが問題でした。
以下では、担当弁護士の見解をご説明しています。
工事代金を請求する場合、当事者同士に対立がなければ証拠がなくてもあまり問題にはなりません。
しかし、裁判になると証拠によって代金債権があることを証明ができなければ、裁判所に工事代金の未払いを認めてもらうことができず、敗訴してしまいます。
実際の業務においては、常に契約書等の資料を求めていては仕事を依頼してもらえないといった事情もあると思います。本件もそのような事案で、少額の工事を頻繁に請負うという取引であったため、契約書などを逐一求めることが難しい状況でした。
そこで、依頼を受けた際、裁判になることを見越して弁護士において証拠を集めるための努力をしました。
具体的には、発注から工事の実施、完了後の費用の請求までの流れを弁護士が聞き取り、証拠となりそうな資料がないか検討しました。
本件では、工事の発注、受注がメールや口頭でなされていました。
口頭でのやりとりはどうしようもありませんが、メールでのやりとりは証拠となり得ます。そこで、メール履歴が失われないように過去の記録を保存してもらうように相談者にお願いしました。
そして、工事完了後の支払い請求や、その後の督促の経過、その際の請求書や督促の書面も確認してもらい残っていれば保存してもらうようお願いしました。
このように支払いがされなくなった場面では、単に督促するだけでなく、早い段階で、関連する資料を証拠として確保しておくことが重要になります。
本件では、弁護士が相談者と打ち合わせをしながら、証拠の確保を進めていきました。
上記の通り裁判に備えて証拠を集めつつ、並行して、弁護士から債務者に内容証明を送り、まずは交渉での解決を試みました。
しかし、まったく連絡がつかない状況は変わらず、交渉では話をすることすらできませんでした。そこで、裁判を起こし、家主の資産を強制的に差押えることで工事代金を回収する方針を立てました。
しかし、相手は、裁判を起こしても、案の定、訴状などの裁判所からの資料を受け取らず、通常の送達手続では送達ができませんでした。ただ、相手が自宅に居住し通常通り生活をしていることは判明していました。相手は、裁判所からの郵便物が届いた時だけ、あえて居留守を使って受け取らないようにしていました。
そこで、本件では「付郵便送達」という方法で送達を行うこととしました。付郵便送達は、たとえ相手が書類を受け取らなくても、裁判所から発送した時点で書類を受け取ったと扱う方法です。
裁判所に「付郵便送達」をしてもらうためには、相手が確実に訴状に記載した住所に居住していることを裁判所に示すことが必要です。
そのためには、事前に相手が居住しているといえるかを調査し、裁判所に調査結果を報告する必要があります。
そこで、弁護士と相談者で協力して、調査を実施しました。調査の結果、郵便物がたまっていない、電気やガスのメーターが動いている、夜中に電気がついているという事がわかりました。また、近隣住民からの聞き取りで、毎日のように車の出入りがあることも確認できました。
これらの事実から自宅に居住していることは明らかです。
以上の調査結果を裁判所に報告すると、無事に付郵便送達が認められ、裁判手続を開始することができました。
付郵便送達によって、無事に裁判手続きが開始されました。
すると、この段階になってようやく無視できないと観念したのか、相手が裁判所に出頭してきました。いままでどれだけ書面や電話で連絡を試みてもすべて無視されてきましたが、裁判までしてようやく相手とやりとりすることができました。
裁判所で、相手は、対応しなかった言い訳をしていましたが、請求額は払うとのことで和解を求めてきました。
その結果、裁判所で強制力のある形での和解が成立し、その後、家主に工事費用全額を支払わせることができました。
今回のケースは、相談者自身で1年ほど督促を続けていましたが、いっこうに相手から応答がなく弁護士にご相談いただきました。
相手は、工事へのささいな不満から、相談者の連絡を一切無視し、支払いもしないという対応をしていたようです。
このような感情的な問題がある場合は、第三者の弁護士が介入することでスムーズに解決することができる場合があります。また、交渉での解決が難しい場合でも、弁護士であれば、裁判やその後の差押え手続を見通して、証拠の収集などを事前に考えて対応することができます。
早期に弁護士に相談することで、結果として債権回収の可能性が高くなると言えます。
今回は、相談者自身が1年間督促したうえでのご依頼でしたが、本来、債権が支払期限を過ぎても回収できない段階ですぐに弁護士にご相談いただくことが重要です。
債権は期限が過ぎて時間がたてばたつほど回収できる可能性が低くなってしまう傾向にあります。債権の未払いトラブルが生じたときはできる限り早期に咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の「債権回収に強い弁護士によるサービス内容」について詳しくは以下をご覧下さい。
咲くやこの花法律事務所への相談方法は以下のページをご参照ください。
また、工事代金未払いの場面での回収方法については、以下の記事でも詳細な解説をしていますので併せてご参照ください。
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