今回の解決事例で書かれている内容(目次)
「デザイン・設計」の事例です。
本件の依頼者は、デザイン・設計会社です。
依頼者は、大手ショッピングモールのテナントとして入店している飲食店を経営する企業(相手)から店舗のデザイン設計や内装工事を請け負いました。
しかし、相手が設計料や工事代金を支払いませんでした。
そのため、依頼者から相手に請求をしていましたが、何度も話をはぐらかされ、一切支払いをしてもらえず、困り果てて相談にお越しになりました。
そこで、咲くやこの花法律事務所で依頼を受けて、設計料や工事代金の回収のために裁判所に仮差押えの申立てを行った事例です。
仮差押えとは、支払をしない相手に訴訟を起こす前に、相手がもっている財産を処分できないように「凍結」してしまう手続きです。「仮差押え」を早い段階でしておくことは、裁判に勝った後に、相手に「金がないから払えない」などといった言い逃れを許さないために重要です。仮差押えをしておけば、裁判後に事前に仮差押えしておいた相手の財産から強制的に支払いを受けることができます。
仮差押えについての詳細は以下で解説していますのでご参照ください。
本件では、相手が大手ショッピングモールに入店していることに着目して、相手がショッピングモールに対してもっていた売上預り金債権を仮差押えの対象とし、仮差押えに成功しました。
以下では、問題解決において弁護士が取り組んだ課題について詳しく解説していきます。
依頼者は、咲くやこの花法律事務所に依頼をされる前に、相手に支払いを求めていましたが、相手からは支払いをしないことの具体的な理由さえ示されませんでした。
さらに、最後には、相手から、今後は弁護士が対応する旨の発言がされましたが、弁護士からの連絡も一切ありませんでした。
実際は弁護士に依頼をしていなかったと思われます。
咲くやこの花法律事務所では、このような相手の不誠実な態度を踏まえて、裁判を見据えた対応が必要であると考えました。
しかし、裁判中に相手の財産がなくなってしまったり、相手が財産を隠してしまうと、裁判で支払いを命じられても相手が支払いをしないおそれがあります。
そこで、裁判の前に相手の財産を凍結する仮差押えの申立てを検討することにしました。
仮差押えは裁判所に申し立てることが必要です。
そして、証拠により裁判官が仮差押えの理由があると認めないと、裁判所から仮差押えを行ってもらうことができません。
本件では仮差押えの申立てをするにあたっては、以下の2つの問題点がありました。
依頼者は行ったデザイン設計や工事について、相手との間で契約書を作成していませんでした。
そのため、裁判所に契約書を提出することができないという問題点がありました。
仮差押えする場合には、仮差押えの対象となる相手の財産をこちら側で把握して具体的に特定することが必要です。
これは裁判所に仮差押えを申し立てる際の申立書にどのような相手の財産を仮差押えするのか記載を求められるためです。
しかし、相手の財産のことは通常はこちらにはわかりません。
そのため、相手の財産を把握することができるかが2つ目の問題点でした。
上記2つの問題点について、以下の通り、上手くクリアすることができ、裁判所で仮差押えの申立てが認められました。
裁判所で仮差押えを認めてもらうためには、依頼者と相手の間で設計や工事についての契約が成立していたことをまず証明しなければなりません。
通常はこの点は設計や工事の請負契約書で証明します。
しかし、本件では、契約書という両当事者の署名や押印がされた文書がなかったため、これまでの依頼者と相手とのやり取りの内容から設計や工事の発注についての合意が成立していることを証明することが必要でした。
そこで、依頼者と相手とのこれまでのやり取りの内容を時系列で詳細に主張していくことにしました。
また、単に説明をするだけでなく、そのやり取りの中で作成した図面などの各文書を、裁判所にひとつずつ証拠として提出していきました。
仮差押えを裁判所に認めてもらうためには、代金額が決まっていることも重要なポイントになります。
通常は代金額についても契約書が必要ですが、本件ではありませんでした。
そこで、工事代金については見積書を証拠として提出しました。また、設計料については、見積書に加えて、依頼者における通常の設計料がいくらであるかについて、依頼者の陳述書(依頼者の言い分をまとめた書面)を作成し、補強する証拠として提出しました。
さらに、依頼者には、裁判所で実施される審尋手続き(申立人の主張の内容や提出した証拠の内容について裁判官から確認や質問をされる手続き)に来てもらいました。
そのうえで、陳述書で書いた内容やその他の証拠の内容について口頭で補足説明をしてもらい、立証していきました。
この審尋手続きについては、依頼者はどう対応すればよいか分からないので、弁護士も同席をして一緒に対応しました。
依頼者は初めての裁判所ということで緊張している様子でしたが、弁護士が横で同席し、裁判官が依頼者に聞いた質問を改めて弁護士から依頼者に伝えるようにするなどフォローをしたため、徐々に依頼者の緊張が解けていきました。
その結果、依頼者も裁判官の質問にうまく説明が出来るようになっていきました。
これらの努力の結果、契約書がなかったものの、裁判所に契約の成立を認めてもらうことが出来ました。
次に、相手の財産の把握が問題になりました。
弁護士がまず相手が所有している不動産が無いかを調査しました。しかし、所有している不動産はなく、そのほかにもめぼしい財産は見つかりませんでした。
そこで、相手はショッピングモールでテナントとして飲食店を経営していることから、そのショッピングモールに対する売上預り金があるはずであると考えました。
ショッピングモールでテナントとして入っている店舗の場合には、売上金を一旦ショッピングモールにすべて納入し、ショッピングモールがテナント料等を差し引いて、テナントに返金するという契約内容になっていることがあります。
つまり、相手はショッピングモール運営会社に売上金を引渡しもらう債権をもっていると考えられましたのでこれを仮差押えする財産として着目しました。
過去の経験から今回のショッピングモール運営会社とテナント企業との一般的な契約内容を把握できましたので、今回の相手とショッピングモールとの売上預り金に関する契約内容を推測することができました。
そして、推測通り、今回のショッピングモールに対して相手は売上預り金債権を持っていました。
これにより、上記の2つの問題点を上手くクリアすることができ、裁判所に仮差押えの申立を認めてもらうことができました。
依頼者の希望通りの結果となり、喜んでいただけました。
工事代金をはじめとする債権の回収では、相手に「金がないから払えない」という言い訳を許さないために、早い段階で仮差押えをすることが重要になります。
ただ、仮差押えをするためには、裁判所に自社が債権をもっていることを証拠で証明しなければなりません。また、相手の財産も把握する必要があります。このハードルは決して低くありません。
今回は、丁寧な証拠集めと弁護士の経験による財産の把握でこのハードルを乗り越えることができました。
仮差押えが成功すると、そのことは裁判所から相手に文書で通知されます。
このことからから、裁判所から仮差押えの通知を受け取った相手に強いプレッシャーをかけることができ、その時点で相手と連絡を取ることで、代金の回収ができることもあります。
そのため、仮差押えに成功した場合には、早期解決を目指して、改めて相手に連絡を入れて支払を督促することも重要です。
最後に、債権は支払が遅れ始めた後、時間がたてばたつほど回収できる可能性が低くなってしまう傾向にあります。
債権回収でお困りの場合には、できる限り早く咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の「債権回収に強い弁護士によるサービス内容」について詳しくは以下をご覧下さい。
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また、工事代金未払いの場面での回収方法については、以下の記事でも詳細な解説をしていますので併せてご参照ください。
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